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ティム・クックの決断とサイバー軍産複合体の行方
サイバーセキュリティと消費者保護について議論を行うホワイトハウス主催のサミットで講演するアップルのCEOティム・クック。2015年2月13日 Robert Galbraith-REUTERS
アップルが米国政府の要請にもかかわらず、iPhone端末のアンロックを拒否して問題になっている。エドワード・スノーデンによる機密暴露以降、米国政府とIT業界の関係は疑問にさらされてきた。法的な枠組みに基づいているとはいえ、IT業界が政府に協力して大量の顧客情報を渡していたことに批判が高まっていた。アップルはそうした批判に答えるため、iPhoneのユーザーが自ら行わない限り、端末のアンロックをできなくした(それ以前はできたということでもある)。
中央情報局(CIA)長官が講演でアップルに改善を求め、連邦捜査局(FBI)や司法省は裁判所を通じてアップルに対しアンロックに協力するよう命令を出したが、アップルは拒否している。
【参考記事】テロ捜査の地裁命令にアップルが抵抗する理由(冷泉彰彦)
スノーデン事件以後、米国政府とIT業界の間の距離は徐々に開きつつある。端末事業者だけでなく、サービス事業者やコンテンツ事業者もまた、たやすく政府の要請には応じなくなり、令状などを厳しく求めるようになっている。英国は、スノーデン事件以後に明らかになった諸問題を整理し、法的な問題を解決するため、調査権限規制法(RIPA)という2000年に作られた法律を改正しようとしている。しかし、Facebookなど大手の事業者が懸念を表明している。
政府によるサイバーセキュリティ対策の増大に伴って発展してきた「サイバー軍産複合体」は変化の時を迎えようとしているのだろうか。
軍産複合体
冷戦さなかの1961年1月、任期満了を迎えたドワイト・アイゼンハワー米大統領は、その退任演説の中で、「軍産複合体」が行使しうる国家や社会に対する過剰な影響力ついて懸念を表明した。1945年の第二次世界大戦終結前から兆候が見え始めた冷戦は、戦後に深刻さを増していった。膨らむ軍事予算を当て込んだ産業界が熾烈な予算獲得競争を繰り広げ、価格が高く、そして利幅の大きい兵器やシステムを米軍に売り込もうとした。ソ連に勝つために最新の強力な兵器を欲しがる軍部の予算は右肩上がりになった。
冷戦時代の軍産複合体はミサイルや戦車、戦闘機、戦艦、潜水艦といったハードウェアの生産・調達を通じて多大な利益をもくろむ産業界の意向と、予算と人員の拡大を求める軍の意向が合致することで成立していた。その結果、安くて効率的な兵器ではなく、高くて精度も分からない兵器が調達される恐れもあった。
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