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意外だが、よく分かる米中のサイバー合意
■首脳会談の成果
いざ、ワシントンDCでの米中首脳会談では、広範なテーマについてやりとりが行われたが、サイバー攻撃については、毎日新聞によれば「どちらの国も知的財産を盗むサイバー攻撃を実行しないし、支援しないことで合意した」とし、「両国はサイバー犯罪について対策を話し合う年2回の高官級の対話メカニズムを創設する」ことになったという。
2014年5月に米国司法省が突然記者会見し、中国人民解放軍の5人の将校を顔写真入りで指名手配し、容疑者不在のまま起訴するという行動に出て以来、米中政府間のサイバー・ワーキンググループは中止されたままだった。今回、それを高官級に格上げして、実質的に再開することになったということだろう。
この合意のポイントは、必ずしも中国(あるいは中国政府や人民解放軍)がこれまで米国に対するサイバー攻撃に関与してきたかどうかを認めたわけではないということである。過去に何があったかについては判断せず、「未来において」どちらの国も知的財産を盗むサイバー攻撃を実行しないし、支援しないことで合意したというところで、中国側も納得し、合意したということだろう。それによって、中国側が重視するメンツを保ち、習主席の訪米を成功させることを優先した。中国側は、首脳会談で重要なテーマにおいて決裂したとの印象・報道をどうしても避けたかったと見るべきだろう。その点では、米国側がこれまでかけてきた圧力が功を奏したとも見ることができる。
■正念場を迎える中国
実はこれまでも米国側の圧力はそれなりに中国を動かしてきた。最初にサイバー攻撃が米中首脳間で取り上げられたのは、2013年6月の首脳会談である。中南米歴訪の後、習主席は米国に立ち寄り、両首脳はカリフォルニアで会談した。その際は、中国はサイバー攻撃の被害者であるとの従来の主張を中国側が繰り返し、合意に達することはなかった。しかし、帰国した習主席は、自らをトップとする中央網絡与信息化領導小組(中央ネットワーク安全・情報化指導ワーキンググループ)を組織した。それ以前は中国側のサイバーセキュリティの責任者がはっきりしなかったが、自分が責任者であることを明示した。
すでに2011年に作られていた国家互聯網信息弁公室(国家インターネット情報辦公室)の主任である魯煒が、習主席と領導小組の権威を得て、サイバーセキュリティ対策に力を入れられるようになった。実際、今回の習主席の訪米前に、中国は国内のサイバー犯罪者を大量に検挙するとともに、孟建柱・中国共産党中央政法委員会書記(サイバー問題特使)がワシントンDCに先乗りして米国政府関係者との事前協議を行っている。
それらが功を奏し、米中首脳会談の決裂を回避し、習主席の訪米を一応は成功させることができた。しかし、いったん合意してしまった以上、その履行が求められることになる。中国側が米国からのサイバー攻撃に文句を付けられるようにもなるが、中国側が自国から米国に向けたサイバー攻撃、サイバースパイ行為を止められるかが最大の関心事になるだろう。
国家主席に就任以来、習近平は権力基盤確保のための激しい国内政治闘争を戦ってきた。反腐敗キャンペーンと称し、江沢民元国家主席の子飼いであった周永康を捕らえ、胡錦濤前国家主席の子飼いであった令計画も捕らえた。おそらく、二人の前任者の介入を抑え、これからが習体制の本番となり、これまで十分な対応をとれなかったサイバー攻撃対策に力を入れられるかが問われることになる。
言質を取った米国政府は、中国の対応を注視することになる。次の大統領選挙が本格化しつつあり、レームダック状態に入りつつあるオバマ政権にとっては、予想外の手柄であり、ひとまずは対中国政策の強力な武器を得たと見るべきだろう。
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