ウォシュレットや炊飯器は「序の口」...ジョージア大使の「最強のおもてなし術」とは?
このようにさまざまな要望をかなえることは時に骨が折れる。しかし、それを含めても日本での滞在に満足して帰国してもらえることはうれしいものだ。
ただし、私は生まれながらにしての「おもてなしの人」ではない。今でも日本に暮らすジョージア人は100人にも満たないが、1990年代初頭にはほとんどいなかった。そのため訪日するジョージア人にはレジャバ家がまず紹介され、わが家に連絡が来た。
そしてその訪日客を両親が自宅でもてなし、日本を案内して回っていたのだ。見知らぬ客人を手厚くもてなす両親に当時の私は違和感を覚えていたものだ。
しかし、今となっては当時の両親の気持ちがよく理解できる。それはジョージアと日本の両国を愛していたからであろう。さらに私の場合は、自分のアイデンティティーはジョージアと日本の両国から成り立っており、どちらかが欠ければ私ではなくなる。
だからジョージア人に日本を知ってもらい、日本人にジョージアを知ってもらうことは私自身にとって必要な営みなのだ。
頼る人がいない遠く離れた国で案内役となり、頼れる存在になれたのであれば、相手の記憶に深く刻まれる。そしてそれが友情の礎になる。
両親から受け継いだ「ジョージア流おもてなし」と日本で育んだ「日本流おもてなし」は今、私の仕事で強力な武器として生かされている。私にとって友情が財産であり続けてきたように、外交にとっても友情こそが財産なのだから。
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
TEIMURAZ LEZHAVA
1988年、ジョージア生まれ。1992年初来日。早稲田大学卒業後にキッコーマン勤務を経て、ジョージア外務省入省。2021年より駐日ジョージア特命全権大使を務める。共著に『大使が語るジョージア』など。