最新記事
シリア情勢

「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】

FRAGMENTED BY GEOGRAPHY

2024年12月19日(木)15時45分
アラシュ・ライシネジャド(テヘラン大学助教〔国際関係学〕)

それを揺るがしたのは、アラブ諸国の民主化の波「アラブの春」だった。2011年に始まったシリア内戦は、外国から来たイスラム原理主義勢力と、政府軍の残虐行為により悪化の一途をたどり、大量の避難民とインフラ崩壊をもたらした。

だが、ここでも地理が重要な役割を果たすことになる。ラッカを掌握した過激派組織「イスラム国」(IS)は、モスルも支配下に置いた。アサド政権は、地中海沿岸の支配を維持することでロシアの軍事支援を確保した。トルコが支援する反体制派はアレッポを支配下に置いた。


戦闘の大部分は、ダマスカスからホムスとハマを経由してアレッポにつながる回廊に集中した。そしてロシアとイランの支援を得たアサドがこの回廊を制圧した時点で、内戦の第1段階は終わった。この回廊を支配した者が、シリアを支配するという地理の論理のとおりだ。

今回のアサドの失脚も、反体制派がこの回廊を攻略したとき避けられなくなった。ダマスカスを陥落させた今、彼らはシリアの運命を握ったと考えているかもしれない。だが、彼らもすぐに学ぶことになるだろう。シリアの地理を支配することは決してできないのだ、と。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

20241224issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月24日号(12月17日発売)は「アサド政権崩壊」特集。アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:FOMC、2025年は造反票増加も メン

ワールド

トルコ、米支援クルド勢力SDFとの停戦否定 「米発

ビジネス

全国コアCPI、11月は+2.7% 生鮮除く食料が

ワールド

米国の不法移民強制送還、10年ぶり高水準 バイデン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 3
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    「均等法第一世代」独身で昇進を続けた女性が役職定…
  • 8
    米電子偵察機「コブラボール」が日本海上空を連日飛…
  • 9
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 10
    日産とホンダの経営統合と日本経済の空洞化を考える
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 9
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 6
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 7
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中