最新記事
荒川河畔の原住民⑬

ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語

2024年11月27日(水)18時45分
文・写真:趙海成

斉藤さんの独りよがりな表情を見て、桂さんは文句を言った。

「いつもお金を持って出て行き、手ぶらで帰ってくる。結局、あなたはなんのために朝早くから夜まで一所懸命に働いているのか。私には理解できない」

「この趣味だけはやめられない。今日は負けたけど、明日また仕事を頑張って稼げばいいんだよ」。斉藤さんの答えは相変わらずの調子だ。

「あなたの自転車はもう修理して、チェーンにも油をさしておいたよ」。桂さんは話題を変えた。

「ありがとう!」

斉藤さんはそう言いながらポケットから千円札を取り出し、桂さんに渡した。桂さんは何も言わずに金を受け取った。

2人のやり取りを見て、私は首をかしげた。あなたたちは兄弟分ではないのか。どうして自転車の修理代を受け取るのか。読者の皆さんも同じ疑問を持つに違いない。

私が斉藤さんだったら、チップも渡しただろう

斉藤さんが去った後、桂さんが説明してくれた。

昨日、斉藤さんは自転車で缶を売りに行って、帰る途中にタイヤがパンクした。すぐに自転車を押して自転車店に修理に行ったが、店員に修理費の見積もりは5000円だと言われたという。

斉藤さんは高いと思って、修理しないことにしたという話を桂さんにしたそうだ。そしてパンクの状態を見て、桂さんが斉藤さんに言った。

「店で修理したら5000円でしょう。私に1000円払えば、自転車を修理してあげるよ」

斉藤さんは快諾し、その結果が先ほど見た場面だった。

桂さんが金を受け取った理由は十分にあると言えるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第3四半期改定値は+2.8% 速報値から

ワールド

韓国大統領、ウクライナ代表団と会談 武器支援要請と

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、10月は前月比2.0%上昇 

ワールド

イスラエル首相、ICC逮捕状に免責=フランス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持…
  • 9
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 10
    トランプは簡単には関税を引き上げられない...世界恐…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中