最新記事
荒川河畔の原住民⑬

ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語

2024年11月27日(水)18時45分
文・写真:趙海成
荒川河川敷のホームレス

左が斉藤さん、右が桂さん(共に仮名)。このような関係性のホームレスは珍しい

<荒川河川敷に住むホームレスを取材し始め、ホームレス同士の付き合いは淡白で浅いものが大半だと知った在日中国人ジャーナリストの趙海成氏。しかし、中には、深い絆で結ばれた「パートナー」たちもいる>

ホームレスの人たちに注目し、交流し始めてから、私は彼らが基本的に「天馬行空 独往独来」(中国の言葉で、「天馬が空を走るように、想像力が豊かで制約に縛られず、他人に依存せずに自立して行動する」という意味)なのだと知った。

同じ小さな「森」に住んでいても、お互いに接触するのは日常の挨拶程度にとどまっている。

少し親しくなると、挨拶に加えて生活や仕事の情報をやりとりしたり、生活に必要な道具を貸し借りしたりすることもあるが、ホームレス同士の付き合いはこのようにあっさりしたものが大半だ。

しかし、すべてのホームレスが淡白で「君子之交淡如水」というわけではない。これは中国の言葉で、立派な人同士の交友関係は、表面上は淡白で素っ気ないように見えるが、実際には誠実で深いものであることを意味する。

彼らの中には「手足情深甜蜜蜜」という人たちもいるのだ。「手足」は兄弟姉妹や親しい仲を指し、「情深」は絆の深さ、「甜蜜蜜」は甘く心地よい関係を表す。家族、特に兄弟姉妹の深い愛情と親密さを表す中国の言葉だ。

桂さんと斉藤さん(共に仮名)はまさにそのような関係だった。私は初めて彼らに会ったときに、そのことに気づいた。

夏のある日、私は河川敷のサッカー場で日に焼けて死にそうになっているカメを見つけた。急いでカメを助けようと、手で持ち上げて小走りで川辺に向かった。

その途中、小さな森を通るが、森の中には青いテントハウスがいくつかある。そこで桂さんに初めて会った。

彼はその時、私に向かって微笑みかけた。それが何を意味するか私は心得た。そして私はカメを助けた後、元の道に戻って彼に話しかけたのだった。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾閣僚、「中国は武力行使を準備」 陥落すればアジ

ワールド

米控訴裁、中南米4カ国からの移民の保護取り消しを支

ワールド

アングル:米保守派カーク氏殺害の疑い ユタ州在住の

ワールド

米トランプ政権、子ども死亡25例を「新型コロナワク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中