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荒川河畔の原住民⑬

ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語

2024年11月27日(水)18時45分
文・写真:趙海成

斉藤さんのテントハウスの前に行くと、桂さんが眉をひそめて斉藤さんのテントのそばにしゃがんで石を縛っていた。

翌日に台風8号の接近が予想されていた。テントハウスが吹き飛ばされるのを防ぐためには、重い石でテントを安定させる必要があった。

桂さんの友人に対するこのような心配りを見て、私は粛然としたのである。台風が来て斉藤さんの安全が本当に脅かされたら、桂さんは全力を尽くして兄弟を救助するに違いないと確信した。

荒川河川敷のホームレス

斉藤さんが暮らしていたのは桂さんが建ててくれたテントハウス(左)/台風が襲来する前に、桂さんが斉藤さんのテントハウスを補強作業中(右)

非対称な関係? 斉藤さんのために尽くす桂さん

桂さんは斉藤さんのために無償で作業をすることが多いが、きちんと勘定をする場合もある。

例えば、彼らに会いに行ったとき、桂さんだけがテントにいた日があった。

桂さんは言った。

「斉藤さんの自転車が昨日パンクしたので、彼は自転車を私の所に置いて、今日、私の自転車に乗って競馬場に行きました。自転車を修理しましたが、彼はまだ帰っていません」

曹操の話をすれば、曹操が到着する(日本語で言えば「噂をすれば影」)。堤防の向こうから斉藤さんが自転車でやってくるのが見えた。

斉藤さんに会い、今日の競馬の運はどうだったかと聞くと、午後4時になったら結果が分かるという。その時、彼は家に座ってビールを飲みながらラジオで放送される競馬の結果を楽しみにするのだ。

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