最新記事
中東紛争

中東は全面戦争に突入寸前、レバノンは「もう一つのガザ」になる

Lebanon could transform into 'another Gaza,' UN chief warns

2024年9月24日(火)16時26分
レイチェル・ドブキン
イスラエルの攻撃を受けて廃墟になったレバノン南部の街

イスラエルの攻撃を受けたレバノン南部の街で生存者を探すレスキュー隊(9月21日) Photo by Fadel Itani/NurPhoto

<ヒズボラ戦闘員が所持していた通信機器が一斉に爆発した攻撃以降、イスラエルとヒズボラの間で攻撃の応酬が激化している>

イスラエルが隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに毎日激しい攻撃を続けている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は9月22日、レバノンを「もう一つのガザ」にすることは許されないと警告した。

【動画】イスラエルとヒズボラの犠牲、戦闘開始後最悪に

パレスチナのガザ地区ではイスラム組織ハマスとイスラエル軍が11カ月にわたって戦闘を続けており、ハマスとの連帯を表明しているヒズボラもまた、イスラエル軍との衝突を繰り返してきた。

こうしたなか、17日と18日にヒズボラのメンバーが所持していた電子機器を狙った大規模な攻撃が続いた。ポケベルやトランシーバーを持っていたヒズボラの戦闘員が、巻き込まれた民間人も含めて数千人が死傷した。

イスラエル軍はその翌日からレバノンのヒズボラの拠点に空爆を開始、ヒズボラもロケット弾を撃ち返した。その規模は日毎に大きくなっている。23日にはレバノン国内のヒズボラ拠点1300カ所を攻撃。レバノン保健省によると492人が死亡した。ヒズボラも、イスラエル北部の空軍基地や軍需企業に向けて100発超のロケット弾を発射した。

グテーレスは米CNNのインタビューの中で、ヒズボラのメンバーが所持していた電子機器を狙った攻撃について「事態が今よりもさらにエスカレートする可能性がある。私が懸念しているのは、レバノンがもう一つのガザになってしまう可能性だ。それは世界にとって壊滅的な悲劇になる」と述べた。

本誌はこの件について国連、イスラエル外務省と在レバノン米大使館にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

「全面戦争に近づいている」

ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行い、約1200人を殺害して250人前後を人質に取ってから、2024年10月7日でまる一年になる。ガザ地区には現在も約100人の人質が拘束されており、そのうち3分の1は既に死亡しているとみられている。

ハマスの奇襲攻撃への報復としてイスラエルはガザ地区で軍事作戦を展開し、ガザ保健省によれば、これまでに4万1000人超のパレスチナ人が命を落としている。国連総会も国連安保理も、ガザ地区での即時停戦と人質の即時かつ無条件の解放を呼びかける。

ヨーロッパとイスラエルの関係強化を目指す非政府組織「ELNET(European Leadership Network-Israel)」の広報担当者であるダニエル・シャドミーは本誌に対し、「事態はかつてないほど全面戦争に近づいているが、まだ後戻りできない段階ではなく、全面戦争を回避することは可能だ」と言った。「イスラエルとヒズボラの報復合戦が続くにつれ、誤算や劇的なエスカレーションの可能性が大きくなる」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中