最新記事
中国

重病説、求心力低下説、失脚説......「ポスト習近平」の中国に備えるべき時が来た

What Comes After Xi

2024年8月28日(水)10時55分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

newsweekjp_20240827111227.jpg

トー・ラム書記長を迎えた習 ANI PHOTOーREUTERS

何年か前から習は脳動脈瘤を抱えているのではないかと噂されていた。これは脳動脈の一部が膨れ、血管壁が薄くなって破裂する危険性がある病気だ。破裂すれば脳内出血で死に至ることもある。だが習は手術を拒み、漢方薬による治療を選択した。この病気では視力低下や平衡感覚の乱れなどの症状が出るが、習は最近カメラの前で転びそうになることがよくある。

過去10年ほどの間に習は何度か、今回同様、公の場から姿を消したが、たいてい2週間ほどで戻ってきた。それらも病状悪化のせいだったのかもしれない。今回は約3週間の不在だったので、かなり危険な状態だった可能性もある。


そうなると当然、習が亡くなる事態も想定しなければならない。その場合、中国と世界にどんな影響が及ぶのか。

健康状態が徐々に悪化しても、習は権力の座にしがみつくかもしれない。だが気力や体力の衰えが目立つようになれば、上層部では跡目争いが激化するだろう。結果、党の結束が乱れ、方向性が失われかねない。習が久々に姿を現した際のメディアの報道が慣例と違ったのも、その表れかもしれない。一方で、習が体調悪化に耐えられず、早々に辞任する可能性もある。ポスト習の中国はどうなるのか。

後継者については両極端のシナリオが考えられる。「改革派」が政権を握るか、引き続き強硬派が居座るか、だ。

両派の妥協もあり得るが、共産党の体質からすれば、いずれどちらかに傾くだろう。習自身、当初は両派の交渉の「落としどころ」として政権の座に就いたのだ。

跡目争いのシナリオ

跡目争いの行方を占う上で、見逃せない点は次の2つだ。

まず、現在の中国共産党中央委員会のメンバー205人の平均年齢は59歳。つまり彼らの多くは毛沢東が文化大革命を始めた1965年前後に生まれたことになる。その当時の彼らの親の年齢は30歳前後だろうから、文革を率いた造反派のリーダーだったとしてもおかしくない。言い換えれば、今の党中央委のメンバーの多くは過激な共産主義者に育てられた、ということだ。この層が党内における習の最も忠実な支持者となっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物は下落、トランプ大統領の対ロ追加制裁警告で

ビジネス

2月鉱工業生産は4カ月ぶり上昇、基調は弱く「一進一

ビジネス

小売業販売2月は前年比1.4%増、ガソリン値上げ寄

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米株安を嫌気 1200円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中