最新記事
中国

重病説、求心力低下説、失脚説......「ポスト習近平」の中国に備えるべき時が来た

What Comes After Xi

2024年8月28日(水)10時55分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

newsweekjp_20240827111323.jpg

毛沢東ばりの強権支配で鳴らした習が去った後、中国はどこに向かうか。写真は1967年秋に紅衛兵を閲兵する毛 REUTERS

第2に、2022年の第20回党大会から10〜20年時間を巻き戻すと胡錦濤(フー・チンタオ)と江沢民(チアン・ツォーミン)の時代になる。この時代の党中央委のメンバーは全て改革派だった。彼らの親の世代はおおむね文革の犠牲者。つまり過激な共産主義に痛めつけられた世代の子供たちが改革派になったわけだ。改革派は過去10〜20年で権力中枢からほぼ排除された。彼らは現在75〜80歳で実権を取り戻すには年を取りすぎている。

この2つのグループを比べれば、習を支持する強硬派がポスト習政権を担うのは目に見えている。西側の人たちはこの結果を残念に思うかもしれない。改革派は穏健で付き合いやすいという見方が西側では一般的だからだ。「偉大な改革者」だった鄧小平が89年に天安門で非武装の学生と労働者を惨殺したことを、欧米は都合よく忘れているのだ。


中国国内で強権政治への不満が高まれば、改革派の政権が誕生するだろうって? 残念ながら、その読みも当たらない。中国は民主主義国家ではないから、民意が政治を動かすことはほぼ皆無。しかも習が党内から改革派を一掃したため、約9900万人の党員は全員、現状維持を望む既得権益層に属している。

中国にも反乱の歴史はあるが、弱体化した政権を倒す日和見主義的なものばかりだ。その証拠に中国には「墻倒衆人推」(崩れかけた壁は群衆に倒される)という警句がある。今の中国は富と影響力のピークを過ぎたとはいえ、まだ崩れかけてはいない。

強硬派の勝利は悪いことばかりではないかもしれない。西側の覚醒を促すからだ。

鄧やその改革派の後継者に目を欺かれ、甘い幻想に浸っていた西側は、敵対的なイデオローグが支配する危険な超大国となった中国の実像に気付き始めた。強硬派が習の後を継げば、西側はまたもや偽りの中国像を夢見る長い眠りに就かずに済む。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中