最新記事
中国

重病説、求心力低下説、失脚説......「ポスト習近平」の中国に備えるべき時が来た

What Comes After Xi

2024年8月28日(水)10時55分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
習近平

習は人民第一を掲げつつ締め付けは強める一方だ VERNON YUENーNURPHOTOーREUTERS

<最高指導者が3週間近くも表舞台から消える怪。重病説がささやかれ、跡目争いの兆候も見られるが>

今年もまた中国共産党の指導部は首都北京に近い河北省の避暑地・北戴河で夏の休暇を過ごした。その間、国内外で習近平(シー・チンピン)国家主席に関するさまざまな臆測が飛び交った。

習は7月30日を最後に20日間、公の場に全く姿を見せなかった。そのため重病説や求心力低下説、さらには失脚説までささやかれたのだ。


だが8月19日、訪中したベトナムの新しい指導者トー・ラム共産党書記長を迎えるため、久々に表舞台に登場。健在をアピールしたが、政治力の低下や健康状態に関する不安は解消するどころか、かえって深まったようでもある。

19日朝にトー・ラムを出迎えた様子は公式のニュースサイトで習の声が流されただけで、画像が出たのは数時間後。それも最初は遠くから撮った写真で、近くで撮った写真は夕方近くに新華社通信が公開し、夜に中国中央電視台(CCTV)が公開、人民日報など他のメディアが画像を出したのはさらに遅かった。

この遅れは、党のプロパガンダを担うメディアが健康不安説を払拭するために習の写真を修整したからなのか。あるいは自らを党の「核心」に祭り上げる習の傲慢さに反発した党内の一派が、メディアに圧力をかけたのか。

中国では指導部の動向について絶えずさまざまな臆測が流れるが、今回はただの噂とは違う。習の身辺で何か異変が起きているとみていい。

とはいえ習は今も厳しい統制の手を緩めていない。中国政府は7月下旬、インターネット利用者に身分証を発行し、ネット利用を一元管理する計画を発表した。昨年施行された改正反スパイ法の下で中国の成人約10億人がこぞって「私服警官」と化し、スパイ容疑で外国人が次々に逮捕されているのは周知のとおり。

最近では公安当局が台湾出身者によるスパイ行為を1000件以上摘発したと発表した。香港住民は今年3月に成立した国家安全条例でさらに徹底した統制下に置かれ、台湾とフィリピンに対する中国の威嚇と嫌がらせも悪化の一途をたどっている。こうした強権統治は中国の歴代の指導者に共通するが、徹底的な締め付けは習の専売特許だ。

親世代の文革体験が影響

その意味では習の指導力が低下しているとは考えにくい。では、なぜ謎めいた形で姿を消し、不可解な形で再登場したのか。毛沢東が政敵をあぶり出すのに使った手法「引蛇出洞」(ヘビを穴から誘い出す)を試みているとも考えられるが、それよりはるかに現実的な見方は重篤な病気にかかっている、というものだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中