最新記事
母子家庭

シングルマザー世帯にとって夏休みは過酷な期間

2024年8月15日(木)19時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
夏休み中の母子

困窮世帯からは夏休みの短縮・廃止を望む声まで聞かれる CryptoWolf/Pixabay

<地域によっては母子世帯の年収中央値が2人親世帯の3割にも達しない>

夏休みのさなかだが、共稼ぎの世帯では子どもの食事の準備が増えたと悲鳴が上がっている。物価高もあり、ご飯を食べさせることすらままならず、「給食がないのは辛い」という声も聞かれる。

NPO法人のキッズドアが初夏に行った調査によると、困窮している子育て世帯の6割が「夏休みの短縮・廃止を望む」と答えたという。学校の夏休みを無くしてほしい。子を持つ親から、こういう声が上がる時代だ。

特に深刻な状況に置かれているのは、1人親世帯だ。1日2食(1食)、この酷暑の中、電気代がもったいないからとエアコンもつけられない。まさに命に関わることで、親子ともども、憲法が定める生存権を脅かされていると言ってもいい。

これが大げさでないことは、1人親世帯(多くが母子世帯)の年収を見ると分かる。<表1>は、母子世帯の年収の中央値を掲げたものだ。地域差があるので、47都道府県別の数値を示している。

newsweekjp_20240815102300.png


 

どの県でも300万円に満たない。全国値は226万円で、最も高い滋賀県でも265万円。200万円未満の県も6県あり、最低の青森県では183万円だ。税金を引いた手取りにするともっと少なくなる。

月収にすると、おおむね15~20万円ほどとみていいだろう。単身者ならともかく、育ち盛りの子が数人いる家庭だと、生活は非常に苦しくなる。1日2食(1食)、酷暑であってもエアコンをつけられない。こういう生活になっても、まったく不思議ではない。子どもに体験をさせようとレジャーや旅行に行くことなど、到底叶わないだろう。

生存を脅かされる絶対貧困の域にあると言ってもいいが、周囲と比較した相対貧困にも苦しめられる。上述のように母子世帯の年収中央値は226万円だが、夫婦と子の世帯(世帯主が30~40代)のそれは742万円。母子世帯の年収は、2人親世帯の3割ほどということになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州市民のEU支持が過去最高の74%、安全保障強化

ビジネス

経済・物価見通し実現していけば、引き続き金利引き上

ワールド

米上院商業委、周波数オークション巡る中国の影響調査

ワールド

中国向けベネズエラ産石油輸出が停滞、米大統領令受け
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    【クイズ】トランプ大統領の出身大学は?
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中