最新記事
カリブ海

【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?

CREEPING CLOSER

2024年6月14日(金)13時26分
ディディ・キルステン・タトロウ(国際問題担当)

newsweekjp_20240613022947.jpg

キューバ危機をめぐるアメリカの行動に抗議する核軍縮活動家(1962年) GETTY IMAGES

新たな経済特区は1月16日にセントジョンズで、SEZホールディングス(SEZH)の名で法人登記された。以前に中国資本が手がけていた事業を引き受けた形で、既に2500万ドルで土地を取得し、さらに1億ドルの新規投資を見込んでいる。

ちなみに経済特区内では独立国家並みの特権が認められることになっているが、その場所はアンティグア最大の軍事基地と、かつての米軍基地に隣接している。

アンティグア・バーブーダ政府が今年になって発行したライセンスの条項を見ると、SEZHは独立の経営委員会を設立し、「特区内の税関、入国、警察サービス」を提供する。商業活動に対する制限はなく、許認可は同国政府ではなく同委員会が出す。税金はかからず、顧客と資産内容の秘密は守られるという。

土地の面積は約6.5平方キロで、周辺の海域を含めると、その3倍の広さになる。そしてここには、中国国有企業である中国鉄建総公司の子会社の中国土木工程集団有限公司(CCECC)がセントジョンズに建設した港に次ぐ2番目の商業用港湾施設ができる予定だ。

本誌が独自に入手し精査した文書によると、1月31日には特区専用の航空会社「ABSEZ国際航空」も登記されている。定款には旅客や貨物の輸送、さらには空港の建設に加え、収益力を高める「その他あらゆる事業」も加えられている。

また「アンティグア・バーブーダ国際CRYPTOサービス地区」というのもあり、ここでは暗号資産のマイニングからディーリングまで、あらゆる業務を提供するという。

なお出資者たちの身元や中国当局とのつながりについては、本誌の調査でも明らかにならなかった。

特区運営に関わる謎の中国人

本誌が閲覧した経済特区運営会社の取締役会議の資料には、「トアン・ホンタオ」なる人物が議長と記されていた。彼の名は、この特区に関する契約が交わされた時期に5人の実業家を乗せてロンドンからアンティグアに飛んだプライベート機の乗客名簿にも載っていた。

また彼の氏名と生年月日は、中国の銀行から3億ドルを詐取した容疑でインターポールから国際手配されている中国人と一致する。ただし前例を見る限り、犯罪の容疑は国外で中国共産党の利益に貢献する中国人にとって何の障害にもならない。

このフライトには国有企業である「中国中鉄」に勤務していたことがある中国籍のチャン・ユイも同乗していた。特区の警備員が本誌に対して上司と認めたチャン・チャンリーという人物も取締役会に出席していた。電話取材に応じたチャンは、自分は「ただの従業員」だとしてコメントを拒んだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中