【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?
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借金漬けになる「一帯一路」
本誌はアンティグア・バーブーダ財務省に具体的な数字を問い合わせたが、返答はなかった。
だが資料によると、22年までの中国からの融資額は1億7600万ドルで、その後も増えている(メルフォード・ニコラス情報相が本誌に語ったところでは、北京で合意された水道管更新事業でも約6000万ドルの融資が約束された)。
この国の国民1人当たりGDPは年1万9300ドル程度だが、中国からの借金は1人当たり2400ドル以上という計算になる。
中国は「一帯一路」構想で世界中にプレゼンスを広げてきたが、相手国を借金漬けにして植民地化しているに等しいとの批判がある。いい例がアジアのラオスやスリランカ、さらにアフリカ諸国などだ。中国は、いずれも「ウィンウィン」の協力関係だと反論しているが。
カリブ海諸国における中国のプレゼンス拡大は、アメリカにとって厄介な事態である。
「大胆な動きだ。カリブ海はアメリカにとって戦略的に重要な地域だ」と言ったのは、カンタベリー大学(ニュージーランド)のアンマリー・ブレイディ教授(国際関係学)。
中国は他の地域でも同じように小さな島国を取り込み、習はロシアのウラジーミル・プーチン大統領とも巧みに連携し、「毛沢東とスターリンが果たせなかった夢」の実現に向かっている。
米南方軍司令部によると、過去5年間に中国は東カリブ海での外交で「大成功」を収めている。「西半球での商業活動を可能にするため、東カリブ海に大規模な物流拠点を求めているのだろう」
アメリカ人なら、カリブ海といえば白い砂浜と青い海、新婚旅行、ラム酒、スパイシーなジャークチキンを連想するかもしれない。だが中国はもっと大きな価値を見いだしているのだと、ペンシルベニア州カーライルにある米陸軍大学校戦略研究所でラテンアメリカを担当するエバン・エリス教授は言う。
「中国はカリブ海を戦略の要衝と見なし、過度にアメリカに警戒させることなく支配力を広げたいと考えている」と、エリスは本誌に語った。ドミニカ、グレナダ、バルバドス、そして「ある程度は」ジャマイカにまで友好の輪を広げているという。
もちろん「アメリカも注視してはいるが、首都ワシントンで警報が鳴るほどではない。少しずつ、目立たぬように影響力を増しているからだ」