最新記事
カリブ海

【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?

CREEPING CLOSER

2024年6月14日(金)13時26分
ディディ・キルステン・タトロウ(国際問題担当)

newsweekjp_20240613023055.jpg

アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相と中国の習近平国家主席(今年1月、北京) OFFICE OF THE PRIME MINISTER OF ANTIGUA & BARBUDA

情報活動の拠点を兼ねるか

中国は口だけでなく金も出す。だから「頼れる貸し手」であり、金利は2%で5年間の返済猶予もあるとブラウンは本誌に語った。アンティグア・バーブーダは2018年にカリブ海諸国の先陣を切って中国の「一帯一路」構想に参加している。

この地域にいる欧州・アジア諸国の外交官の見立てでは、中国の関心は経済的なものに限らない。新しい大使館は規模と厳重な警備ゆえに「要塞」と呼ばれているが、スパイ活動の拠点である可能性も高い。

米政府によると、中国はキューバにも同様の拠点を設けているが、キューバでは米政府の監視が厳しい。だからアンティグアを新たな拠点ないし後方基地と位置付けたらしい。

米南方軍司令部の広報担当はこう述べた。「中国がカリブ海地域で進めている物流インフラへの投資を見ると、国有企業や現地の中国人に軍事目的の諜報活動をさせている可能性がある。中国共産党には公務員を標的に勧誘や贈賄の慣行があるので、なおさら憂慮される」

過去にアメリカは南北米大陸で覇権を確保していた。

19世紀にはモンロー主義を掲げ、外国による政治介入を潜在的な敵対行為と見なした。1962年のキューバ危機ではソ連による核兵器配備に猛反対し、世界は核戦争の瀬戸際に立たされた。83年には米軍がグレナダに侵攻して親ソ政権を倒した。

もともと英領で奴隷制度があったアンティグアでは、中国の影響力拡大に不安を覚える人もいる。今はチャールズ英国王を国家元首としているが、共和制への移行を問う国民投票が計画されてもいる。

野党・統一進歩党のジゼル・アイザック議長は首都郊外の自宅でこう語った。「この国は中国に主権を売り渡した。そう思っている人はたくさんいる。中国は超大国として、もっと戦略的要衝を手に入れたいのだろう」。

中国企業が建設したセントジョンズの港湾を利用するような人たちは、中国との関係について多くを語ろうとしないそうだ。「要するに、弱みを握られているからだ。下手に口を滑らせれば自分の身に危険が及ぶ」

同党の議員で、ラジオ番組の司会者でもあるアルジャーノン・ワッツも同様な懸念を表明し、「カリブ海ではお金が王様だ」と言った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訪米のロ特使、「関係改善阻む勢力存在」と指摘

ビジネス

イスラエルがシリア攻撃強化、暫定政権に警告 トルコ

ワールド

ハンガリー、ICC脱退を表明 ネタニヤフ氏訪問受け

ワールド

ミャンマー地震、死者3000人超える、猛暑と雨で感
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中