最新記事
ロシア

誰も驚かない「いかにも」なプリゴジンの最期...だからこそ「ワグネル・ブランド」は今後もアウトローを魅了し続ける

Branding Wagner after Prigozhin

2023年8月28日(月)13時40分
クララ・ブルーカルト(安全保障問題研究者)、コリン・クラーク(米スーファンセンター上級研究員)

2カ月前の反乱の際、ロシア南西部のロストフナドヌに進軍したワグネルの部隊は、市民から熱狂的な歓迎を受けた。反乱が頓挫した後も、プリゴジン人気が衰えることはなかった。

プリゴジンはウクライナ戦争の前線に赴き、インターネットを通じてロシア軍の上層部を痛烈に批判した。そして自分こそ真の愛国者だというイメージを打ち出した。

5月には、ウクライナで死亡したワグネルの戦闘員とされる数十人の遺体が地面に並ぶ様子を撮影した動画を投稿した。大勢の兵士が遺体となって帰国することに怒りと屈辱感を募らせるロシア民族主義の愛国者にアピールするには絶好の演出だった。

プリゴジンは戦死者を「祖国のために命をささげた」とたたえ、彼らを殉教者に仕立て上げた。自分がその殉教者の1人になるとは、まだ思ってもいなかったのだろう。

一方でワグネルは、ウクライナでの愚行と蛮行のせいで国際的な評判を落とした。シリアではISを掃討し、油田やガス田を制圧する活躍で名を上げたが、ウクライナで戦っているのは受刑者や乱暴者の寄せ集め集団にすぎず、まさに砲弾の餌食となっている。

こうなると、もはや高級武装ブランドではない。今のワグネルは、ほぼ「暴力を自己目的とする無法集団」に成り下がっている。

ロシアの軍隊が昔から「質より量」を重んじてきたのは事実だが、ならず者に粗末な武器を持たせ、まともな訓練もせずに戦場に送り込むという手法で、ワグネルのブランド価値は大いに損なわれた(ただしアフリカや中東の一部の国では今も重宝されている)。

そして6月に反乱を起こしたことで、「無法者」というワグネルとプリゴジンの悪評はさらに上塗りされた。短命に終わった「モスクワ進軍」はロシア政府内の亀裂を露呈させ、結果としてプリゴジンの身の破滅につながった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中