大型ハリケーンが近付く海域で、数百匹のサメが集結する様子を撮影...気象の専門家からも注目集まる
Hundreds of Pregnant Sharks Gather in California During Hilary
USO/iStock
<ハリケーン「ヒラリー」が接近するなかでも、米カリフォルニア州の浅瀬には妊娠中のトラフザメが数多く集まっていた>
熱帯低気圧「ヒラリー」が米カリフォルニア州を通過した8月21日、数百匹のトラフザメが同州サンディエゴの町ラホヤの浅瀬に集結している様子が目撃された。この様子は動画にも撮影されたが、妊娠中のメスが浅瀬に集まるサメの習性は、ハリケーン予測に役立てるため気象学者たちの注目も集めている。
■【動画】そこらじゅうサメだらけ...浅瀬で群れになって泳ぐトラフザメ(とコウモリエイ)
「ヒラリー」は16日に発生し、急速に勢力を強めてわずか24時間で熱帯暴風雨からハリケーンに発達。18日早朝にはカテゴリー4のハリケーンとなり、風速は60メートルを超えた。
その後、風の勢いは弱まり、週末にかけてメキシコのバハカリフォルニア半島を通過する頃には、カテゴリー1に。さらにカリフォルニア州を通過するなかで勢力を弱め、熱帯性暴風雨となったが、それでも周辺地域に大雨と洪水の脅威をもたらしていた。
一般的にハリケーンや激しい嵐が迫っているとき、サメは普段よりも深い水域に避難するという。だが、X(旧Twitter)に投稿された今回の動画には、少なくとも200匹の妊娠中のトラフザメが普段どおりに浅瀬に集まって過ごしている様子が捉えられていた。
米ポイント・ロマ・ナゼレン大学のアンドリュー・ノーザル准教授(生物学)はXに、トラフザメたちが浅瀬で泳いでいる様子を捉えた動画を投稿。「ハリケーン『ヒラリー』が明日にもサンディエゴに到達するとみられているなか、今朝は大量のトラフザメとコウモリエイが浅瀬にいた。嵐が通り過ぎた後に、また彼らの様子をチェックしてみたい。皆さん、安全にお過ごしください」という言葉を添えた。
トラフザメの「避難」行動に科学者は注目
ノーザルは本誌に対して、浅瀬にいたトラフザメは大半が妊娠中のメスだったと語った。カリフォルニア州サンディエゴの町ラホヤの海岸線は、水温が比較的高く波が穏やかなため、トラフザメが集まることが多いという。
「孵化を早めるために受精卵を温めている、というのが我々の仮説だ」とノーザルは述べた。だが彼が率いる研究チームが関心を寄せていたのは、ハリケーンのなかでトラフザメがより深い水域に「避難」するかどうかだったという。
サメはハリケーンの接近前に、気圧の変化を感じ取ることができる。その変化への反応は種によって異なり、より深い水域に避難するサメもいれば、大型の種はそのままの場所にとどまる傾向にある。一部の専門家は、海洋学的データを集めてハリケーン予測に役立てるために、サメにタグをつけて観察する試みを行っており、気象の専門家もサメのこの能力に強い関心を寄せている。