最新記事
日本社会

若者の都市部への集中は、ますます加速している

2023年8月2日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
東京一極集中

若年人口の都市部への流出は地方にとっての脅威 David Cunningham/iStock.

<東京では青年期の世代人口が倍増しているのに対して、地方によっては3割以上減っている県もある>

政府は、進学を機に上京した学生が卒業後に地元にUターンした場合、移住支援金を支給するという。この手の政策は自治体レベルでも実施されていて、都市部に出た地元出身者が戻ってきた場合、生活補助金を支給することなどをうたっている(たとえば長崎県)。

人口の流動性は時代と共に高まり、地方の県は、進学や就職を機に(希少な)若者を都市部に吸い上げられるようになっている。それは人口の自然減をも上回る脅威で、どうか地元に帰ってきてほしい、都会の大学で学んだ知識や技術を地域の発展に生かしてほしい、と関係者が思うのは当然だ。

そのために移住(Uターン)支援金などの政策がされているのだが、政策の効果は絶えず検証されて好ましい方向に修正をされなければならない。その際、同世代のどれほどが地元に残っているかを計算するのも1つの手段だ。

たとえば筆者の世代は、1990年に10~14歳で、15年後の2005年に25~29歳となった。鹿児島県の統計に当たってみると、前者が13万1640人、後者が9万6843人(『国勢調査』)。後者を前者で割ると0.733で、10代前半から20代後半にかけて、大よそ3割減っていることが分かる。<表1>は、この数値を都道府県別に算出し高い順に並べたものだ。

data230802-chart01.png

多くの県で1.0を割っている。青色が付いているのは数値が0.8未満、つまり2割以上減っている県で、濃い色は3割以上減を意味する。その数は16で、進学や就職で都市部に出た若者が戻ってきていないところだ。長崎県では、10代前半時は11万8849人だったが、20代後半時では7万8747人。同世代人口が実に35%以上も減っている。赤色の都市圏に住み着いたままになっているのだろう。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中