最新記事
アメリカ

中東から始まったアメリカ外交の落日

THE AMERICAN CENTURY ENDS IN THE MIDDLE EAST

2023年5月18日(木)12時20分
トム・オコナー(本誌外交問題担当)

現在、アメリカの敵対国との意思疎通は史上最低レベルに落ち込んでいる。一方で中国は地政学的な目標の追求と拡大に余念がなく、ロシアはウクライナで終わりの見えない戦争を続け、イランはライバルとの関係修復に動き、北朝鮮は核兵器開発を加速させている。米外交の主要な武器である制裁は、今のところ行動抑制にほとんど役立っていない。

アメリカは国際政治の現状を民主主義と権威主義の闘争と定義している(サウジアラビアのような重要なパートナーはこの構図に必ずしも当てはまらないが)。だが、「イデオロギーや統治の形態を重視すべきではない」と、マトロックは言う。

「環境破壊、テロやあらゆる種類の暴力、人口の大移動、パンデミックの脅威、核やその他の大量破壊兵器(WMD)の使用回避など、前例のない課題に対処できる平和で豊かな世界を築くためには、全ての国に敬意を持って対応する必要がある」

アメリカのアプローチは崩壊したソ連と同様、「自分たちには世界を変える知識と力がある。軍事的・経済的支配力を行使して他国の社会を変えさえすればいい」という時代遅れの信念に依拠していると、マトロックは警告する。

このような発想が「私たちは冷戦に勝った」という考えを広げることになったと、マトロックは指摘する。「ソ連の崩壊は冷戦終結を告げる出来事であり、ロシアは敗者だ。共産主義体制の崩壊は資本主義と民主主義が人類の必然的未来であることを証明した。核兵器を持つアメリカは無敵であり、世界の変革には私たちのリーダーシップが必要だ......」

「こうした思い込みは誤りであり、実現不可能な目標だった」

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ビジネス

アングル:日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心

ビジネス

三菱UFJ銀、貸金庫担当の元行員が十数億円の顧客資

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中