中東から始まったアメリカ外交の落日
THE AMERICAN CENTURY ENDS IN THE MIDDLE EAST
現在、アメリカの敵対国との意思疎通は史上最低レベルに落ち込んでいる。一方で中国は地政学的な目標の追求と拡大に余念がなく、ロシアはウクライナで終わりの見えない戦争を続け、イランはライバルとの関係修復に動き、北朝鮮は核兵器開発を加速させている。米外交の主要な武器である制裁は、今のところ行動抑制にほとんど役立っていない。
アメリカは国際政治の現状を民主主義と権威主義の闘争と定義している(サウジアラビアのような重要なパートナーはこの構図に必ずしも当てはまらないが)。だが、「イデオロギーや統治の形態を重視すべきではない」と、マトロックは言う。
「環境破壊、テロやあらゆる種類の暴力、人口の大移動、パンデミックの脅威、核やその他の大量破壊兵器(WMD)の使用回避など、前例のない課題に対処できる平和で豊かな世界を築くためには、全ての国に敬意を持って対応する必要がある」
アメリカのアプローチは崩壊したソ連と同様、「自分たちには世界を変える知識と力がある。軍事的・経済的支配力を行使して他国の社会を変えさえすればいい」という時代遅れの信念に依拠していると、マトロックは警告する。
このような発想が「私たちは冷戦に勝った」という考えを広げることになったと、マトロックは指摘する。「ソ連の崩壊は冷戦終結を告げる出来事であり、ロシアは敗者だ。共産主義体制の崩壊は資本主義と民主主義が人類の必然的未来であることを証明した。核兵器を持つアメリカは無敵であり、世界の変革には私たちのリーダーシップが必要だ......」
「こうした思い込みは誤りであり、実現不可能な目標だった」
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