「台湾有事」で沖縄をも揺さぶる中国だが、逆に日米を団結させるだけ
宜野湾市にある普天間基地を眺める人々 Issei Kato-REUTERS
<蔡英文総統の訪米への「対抗措置」とみられる台湾周辺での軍事演習。沖縄も含む「第1列島線」への威嚇は、長年の駐留で沖縄と日本に深い愛情が芽生えたアメリカ人の気持ちも逆撫でる>
中国は昨年12月16日、台湾への威嚇を拡大し、日本(および同盟国のアメリカ)に対するより直接的な行動に出た。空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通過したのだ。
中国海軍は12月17~22日、遼寧から計180機の戦闘機とヘリコプターを飛ばし、米軍基地のある沖縄を含む南西諸島を想定したと思われる演習を実施した。
演習が行われたのは、米軍が演習に使用する海域や空域の近く。日米両国が沖縄の中では比較的安全と考えていたエリアだ。
こうした中国の動きは、ある程度まで通常の反応だ。中国は台湾の防衛力強化に対抗して頻繁に武力による威嚇を行っている(編集部注:今年4月8~10日にも台湾周辺で軍事演習を行うと発表した)。しかし、沖縄自体にも独自の戦略的重要性がある。
沖縄には悲劇の歴史がある。独立国だった琉球王国が日本に併合されたのは19世紀だが、最悪の人的損失が生じたのは第2次大戦中。旧日本軍が命令したとされる集団自決を含め、民間人の約4分の1が失われた。
戦後、沖縄は米軍の拠点となり、地元の人々は農地を手放すことを余儀なくされ、米軍との間で長期にわたる問題が発生した。
当時、中国はアメリカによる日本封じ込めの恩恵を受けていた。だが現在の状況は大きく変わっている。日米関係はより緊密に、米軍のプレゼンスはより大胆になった。
中国海軍の増強が進み、アメリカとの衝突の可能性が高まっている今、中国は第1列島線からの出口を以前にもまして必要としている。
第1列島線とは、中国と太平洋の間にある台湾や沖縄を含む大小の島々を結ぶラインのこと。この島々の領有権を主張する国の存在は、戦時に中国が外洋に出づらくする可能性がある。
アメリカのジェームズ・スタブリディス退役海軍大将は著書『海の地政学』で、南西諸島が中国の出口になる可能性があると主張した。