最新記事

モルドバ

ロシアの揺さぶりでモルドバが領空を一時閉鎖

Moldova Closes Airspace as Russia Coup Fears Grow

2023年2月15日(水)16時20分
イザベル・ファン・ブルーゲン

国内に親ロ派と駐留ロシア軍をかかえるモルドバのマイア・サンドゥ大統領(2022年11月、パリ) Sarah Meyssonnier-REUTERS

<ウクライナの隣国モルドバでロシアがクーデター計画? モルドバとルーマニアにも表れた「気球」と関係はあるのか>

モルドバ共和国の国営航空会社は2月14日、モルドバの領空が一時的に閉鎖されたと発表した。同国の上空で目撃された気象観測気球に似た物体を調査し、安瀬を確保するための措置だったという。その数時間前には、ロシアがモルドバ政府の転覆を計画している、という主張を否定したところだった。

モルドバ航空は、現地時間午後14時頃にフェイスブックで領空の閉鎖を発表し、15時17分に閉鎖が解除された、と情報を更新した。

モルドバ航空は最初、フェイスブックで「お客様へ:現在、モルドバ共和国の領空は閉鎖されています。私たちはフライトの再開を待っています」と報告。その後「更新情報──閉鎖は解除されました」と発表した。

キシナウ国際空港の関係者はロイターに対し、同国の空域は治安上の懸念から一時的に閉鎖されたと述べた。

この事態は、ロシアがモルドバ国内でクーデターを画策しているという懸念が高まるなかで発生した。モルドバのマイア・サンドゥ大統領は13日、ロシアがモルドバ国内で反政府デモ隊を装った人々の助けを借りて、現政権を転覆させ、モルドバのEU加盟を阻止しようとしていると主張した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の盟友であるサンドゥは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ戦争にモルドバを利用しようとしていると非難した。

モルドバの微妙な立場

モルドバはウクライナと国境を接する旧ソビエト連邦の構成国で、プーチンによるウクライナ侵攻の間中、国内の親ロシア派支配地域トランスニストリア(「沿ドニエストル共和国」)にはロシア軍が駐留している。

shutterstock_2149808779.jpg
ウクライナとの間の細長い土地がトランスニストリア地域。ロシア軍が駐留している  Peter Hermes Furian/Shutterstock

ロシア外務省は14日、クーデターの疑惑を「まったく根拠がなく、事実無根」と断じた。マリア・ザハロワ報道官は、「アメリカや他の西側諸国、ウクライナでよく使われる古典的な手法」だと述べた。

一方、ゼレンスキーは2月9日、ブリュッセルで開催された欧州理事会の首脳会議で、ウクライナは「モルドバの破壊」をもくろむロシア情報機関の計画を傍受したと語っている。

サンドゥは13日の記者会見で、ロシアの「計画」には、「破壊工作と、民間人を装った軍事訓練を受けた人々が暴力行為、政府ビルの攻撃、人質の獲得を行う」ことが含まれていると述べた。
「ウクライナから受けた報告には、この破壊活動を組織する場所とロジスティック面も示されている。また、暴力行為に外国人を利用することも想定されている」

モルドバのナタリア・ガブリリツァ首相は、ゼレンスキーがこの情報を発表した翌日に辞任を表明した。その後、サンドゥは国防・安全保障顧問のドーリン・レチャンを後任に指名した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ上振れ懸念、利下げ段階的に=ロンバルデリ

ワールド

ルーマニア大統領選、12月に決選投票 反NATO派

ビジネス

伊ウニクレディト、同業BPMに買収提案 「コメルツ

ワールド

比大統領「犯罪計画見過ごせず」、当局が脅迫で副大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中