トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?
BIDEN’S FREER HAND
それに、もしも共和党の議席数が下院の過半数(218議席)をわずかに上回る程度であれば、下院の常任委員会や調査委員会を共和党議員で固めることは難しくなる。規則上、1人の議員が6つ以上の委員会に籍を置くことは禁じられているからだ。
ベルト教授によれば、「こういう制約がある以上、少しでも極右の議員が造反すれば、マッカーシーの議会運営は難しくなる」。
対中関係はさらに悪化か
そうは言っても、下院の多数派となった共和党の声が大きくなり、世界に好ましからざる影響を及ぼす事態は十分に考えられる。
とりわけ懸念されるのは対中関係だ。主要な常任委員会の委員長は共和党議員が務めることになるが、例えば外交委員会の委員長候補とされるマイケル・マコール議員は、台湾防衛への一段の関与を求めている。
また軍事委員会委員長の呼び声が高いマイク・ロジャーズ議員は、インド太平洋地域における防衛協力体制の強化に熱心だ。こうした強硬派が実権を握れば、台湾訪問で物議を醸した現下院議長のナンシー・ペロシ以上に中国側を刺激し、米中間の対話を困難にしかねない。
ただし今のバイデン政権は中国に対し、共和党並みの厳しい姿勢を見せている。オーストラリアと日本の軍備増強を支援し、日米豪印4カ国による新たな安全保障の枠組みを形成し、中国に対するアメリカの優位を維持するため、露骨に保護主義的な産業政策も推進している。
バイデン政権は技術移転の規制を強化することで「中国の能力を広範かつ根本的に阻止する決意を示した。......今後はバイオテクノロジーや金融など、およそ戦略的と見なされる分野で一段と厳しい措置を繰り出すだろう」と、中国問題に詳しいジョン・ベイトマンは指摘している。
ユーラシア・グループのアナ・アシュトンも選挙の翌日に、「中国政策に関して共和党とバイデン政権の間に大きな差はない」と述べた。
運よく民主党が(ぎりぎりでも)上院の支配権を維持できれば、バイデンは連邦裁判所の判事などの重要な人事で主導権を握れる。だが「下院は余計に御し難く、過激な妨害に走るようになる」と予測するのは政治学者のララ・ブラウンだ。