トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?
BIDEN’S FREER HAND
トランプは党のお荷物に
ちなみに共和党では、トランプが支援した選挙否定派(前回の大統領選に不正があったというトランプの根拠なき主張に賛同する一派)の候補が何人も当選しているが、トランプと手を組んだせいで落選した候補のほうが多い。
注目を集めた上院選では、ペンシルベニア州のメフメット・オズやニューハンプシャー州のドン・ボルダックが敗れた。下院選では少なくとも8人のトランプ推薦候補が落選し、州知事選でも選挙否定派の大物たちが敗退した。
開票速報を見て、公然とトランプ排除を求め始めた保守派の論客もいる。投資会社シタデルを率い、共和党への巨額献金で知られるケン・グリフィンは、今こそトランプを切って「前へ進むべき」だと述べた。
長らくトランプべったりだったFOXニュースに登場した保守系コラムニストのマーク・ティーセンは、現職バイデンの支持率が低迷し、高インフレが続くなかで共和党が圧勝できなかったのは「大惨事」だと述べた。
FOXと同じ系列の大衆紙ニューヨーク・ポストは翌日の1面にフロリダ州知事選で圧勝したロン・デサンティスの写真を掲げ、「デ・フューチャー」という大見出しを添えた。共和党の未来(フューチャー)はデサンティスにあり、というわけだ(デサンティスは次期大統領選に出馬意欲を示している)。
アメリカの敵、とりわけロシアは共和党の圧勝を願い、そうなればアメリカ社会の分断が一段と深まり、ウクライナへの支援も止まると信じていた。
ロシア国内の報道を精査しているジュリア・デービスによれば、モスクワ大学の政治学者アンドレイ・シドロフは投票日の直前に、こう語っていた。
「トランプはアメリカ社会にたくさんの憎悪をかき立てる。アメリカ人が憎み合えば憎み合うほど、わが国には好都合だ」
アメリカの同盟国はどうか。乱暴で孤立主義、同盟関係も国際条約も尊重しないトランプ政治から、アメリカがようやく脱却する兆しが見えて安堵したというところか。
「トランプの最大の功績は」と政治学者のブラウンは言った。「自分がいれば勝てると共和党に信じ込ませたことだ」。しかし今度の選挙で、その化けの皮が剝がれた。
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