世界の港を次々と支配する中国...国有「海運」企業が遂に「正体」を露わにし始めた

BUSINESS OR POWER?

2022年11月3日(木)13時41分
ディディ・キルステン・タトロブ(本誌米国版・国際問題担当シニアリポーター)

コスコ・グループは16年に、ギリシャ最大の港ピレウスの運営会社の株式の51%を取得した。以来、ピレウス港は商業的に目覚ましい成功を収めている。

中国の利権をめぐる懸念は誇張されがちで、中国の企業が国外で港湾や物流施設を手に入れたいと思うのは普通のことだという反論もある。しかし、経済、政治、軍事が融合した中国のシステムを考えれば、港湾でのプレゼンスはスパイ活動のリスクを伴うと、オーストラリア陸軍のある元情報将校は指摘する。

ハンブルクから西に約130キロの海軍の町ウィルヘルムスハーフェンでは20年に、国有企業の中国物流(チャイナ・ロジスティクス)が新しいコンテナ埠頭「ヤーデ・ウェザー・ポート」の99年間のリース契約を締結。中国から船や物資が来るようになった。

「スパイ活動を妨げるものはない」

埠頭から堤防に囲まれた低地を5キロほど南下すると、ヘッペンザー・グローデン海軍基地がある。ここはドイツ海軍最大の要衝で、艦船の建造と修理が行われ、潜水艦が立ち寄り、NATO同盟国との緊密な通信や合同演習の拠点にもなる。

今年2月、ドイツ海軍のフリゲート艦バイエルンが7カ月の航海を終えて同基地に帰還した。ドイツ艦船の西太平洋派遣は20年ぶりで、オーストラリアや日本に寄港し、共同訓練などに参加した。台湾を中心に地域の緊張が高まるなか、中国に対するメッセージでもあった。

バイエルンは帰還時にヤーデ・ウェザー・ポートのすぐそばを航行した。先の元情報将校によると、通過する際に戦略的な軍事資産の信号を遮断するように助言されたはずだ。

「ウィルヘルムスハーフェンでは、商業港から海軍基地に向けたスパイ活動を妨げるものはない」と、米シンクタンク、ヘリテージ財団元シニアリサーチフェローのディーン・チェンは指摘する。チェンによると、アメリカは例えば、軍事拠点の近くから中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の携帯電話基地局を撤去する方針だ。

中国企業と港湾ハブのリース契約を結んでいるドイツの2つの州政府は「一帯一路」の一環として1億ドルの投資のプロジェクトを売り込んできた。ウィルヘルムスハーフェンがあるニーダーザクセン州に契約の詳細を尋ねたが、返答はなかった。ヤーデ・ウェザー・ポートは機密保持を理由に詳細を明らかにしなかった。

ドイツ国防省はメールで、一般に個々の軍事安全保障上の問題にコメントはしないが、「われわれは事態を常に注視しており、必要に応じて調整も行っていると考えてもらって構わない」と述べている。

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