世界の港を次々と支配する中国...国有「海運」企業が遂に「正体」を露わにし始めた
BUSINESS OR POWER?
ドイツのロベルト・ハベック経済・気候保護相は、中国資本の受け入れに反対を表明。ドイツでは港が重要インフラと定義されており、EUは中国を「体制的ライバル」と呼んで警戒したこともある。信頼できる筋によれば、EUの幹部も戦略的懸念から反対だという。
「トレローの埠頭はハンブルク港の一角にすぎない」と、ハベックは9月に述べた。「しかし中国は、戦略拠点を確立してヨーロッパとドイツの通商政策を動かそうとしている。そんなことを許すべきではない」
一方、市の海運界と実業界は受け入れに賛成で、政府筋によればオーラフ・ショルツ首相府と財務省も商業にプラスになると前向きに捉えている。実業界の関係者によればコスコ・グループは、嫌ならポーランドに話を持っていくと政府に脅しをかけたという。
アメリカ大陸にまで達した「一帯一路」
だが世界3位の輸出大国ドイツも、拡大し続ける中国の港湾ネットワークの中では一つの点にすぎない。カードンらによる研究によれば、ネットワーク拡大の半分以上は習近平(シー・チンピン)国家主席による「一帯一路」構想の一環として、過去10年間に実現した。ヨーロッパ、アジア、アフリカと中国を海運、鉄道、デジタル通信網でつなぐ「一帯一路」は、今やアメリカ大陸まで延びている。
18年12月、パナマを訪れた習はマウスをクリックして装置を起動し、太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河の水門を開けてコスコ・グループのローズ号を通した。パナマには、中国企業が権益を持つ港が3つある。
習はローズ号の船長に無線で「わが国の海運業を促進し、世界貿易を繁栄させてほしい」と話しかけ、激励した。コスコ・グループによれば、パナマ運河を通過する同社の船舶は年間300隻に上るという。
ほかにもコスコ・グループは19年、ペルーのチャンカイ港の埠頭を運営する会社に60%の出資を行った。チャンカイ港は首都リマのカヤオ港の広大な流通センターに隣接している。アメリカでは5つの港の運営に関わっているが、中国の国有企業が重要インフラを所有あるいは運営することへの懸念から、これ以上の拡大はないとカードンは予想する。
18年にコスコ・グループが香港の海運会社、東方海外国際(オリエント・オーバーシーズ・インターナショナル)を買収した際、米国土安全保障省と司法省は安全保障に関する協定に基づき、東方海外国際が米西海岸のロングビーチで所有していたコンテナ埠頭を売却させた。
大西洋の東側では、さらに活発な動きが見られる。中国企業はアフリカの30カ国で61の港湾施設に出資している。地域の沿岸や島嶼部で、中国が所有権を持つ港湾インフラがない国はわずか8カ国。モロッコ、エジプト、サウジアラビア、イラク、アラブ首長国連邦、オマーン、そしてアメリカの同盟国であるイスラエルにも中国の港湾利権が点在する。