世界の港を次々と支配する中国...国有「海運」企業が遂に「正体」を露わにし始めた
BUSINESS OR POWER?
チェコの首都プラハのシンクタンク、シノプシスの設立者マルティン・ハラは「党員は党の規律に縛られ、党の求める任務を遂行しなければならない」と説明する。中国国民は情報機関への協力が義務付けられているが、「これはそうした義務付けを一歩推し進めた形」と彼は言う。
コスコ・グループはハンブルク港に狙いを定め、港内にあるトレロー・コンテナ埠頭の運営権の35%を買い取ると提案。独ショルツ内閣は10月26日、反対の声も強いなかで、24.9%の権益取得を承認した。
ヨーロッパには中国企業の出資を受ける港が、ギリシャのピレウスからポーランドのグディニャまでネックレスのように連なる。ここにハンブルクが加われば、コスコ・グループは経済大国ドイツの商業の大動脈への影響力を強めるだろう。
「コンテナ埠頭を押さえるのは戦略的側面が強い」と、ハンブルク大学ビジネススクールのヤン・ニンネマン教授は指摘する。コスコ・グループは船舶の出入りや荷積み・荷降ろしに関して発言権を持つことになると、ニンネマンは言う。
情報流出や人権侵害の懸念も
情報への影響を指摘するアナリストもいる。デジタル化が進むサプライチェーンにおいて、港湾や物流の運営者は企業、輸送、個人の情報を大量に扱う。中国の運営企業はサプライチェーンを管理するために中国製の通信技術を採用し、地方の行政機関にアクセスするかもしれない。
中国企業が港を買収するのは異なる種類の力が合流する「戦略拠点」を築くためだと、米海軍大学のカードンは言う。
コスコ・グループの子会社である中遠海運港口(コスコ・シッピング・ポーツ)とハンブルク港を管理するハンブルガー・ハーフェン・ウント・ロギスティクAG(HHLA)の間で、出資をめぐる合意ができたのは昨年の秋だった。HHLAがそれまで海運業者によるコンテナ埠頭の所有を拒否していたことを考えれば、大きな方針転換だ。
「ハンブルクはヨーロッパの物流の中枢で、大いに発展が見込める」とコスコ・シッピング・ポーツの張達宇(チャン・ターユィ)会長は言い、同市への経済効果を約束した。
明るい話だけではない。昨年9月、ドイツ製ヘリコプターを積んだリブラ号がハンブルクから上海に向けて出港した。中国語の報道によればヘリは「パトロール」に使用でき、浙江省麗江市で実際にそうした使い方をされている。中国の公安部は大規模な監視活動を行っていると、人権擁護団体は警鐘を鳴らす。