サッカー場事故で批判渦巻くなか就任した警察本部長が任命4日目で逮捕 麻薬関連容疑
国家警察長官の任命責任は
テディ州警本部長の任命は国家警察のリストヨ・シギット・プラボウォ本部長の指示によるもので、任命時はサッカー場の悲劇とは関係なく通常の異動としていた。だとすれば当然任命責任が浮上してくるが、地元メディアもさすがに国警本部長の責任追及には今のところ及び腰である。
さらに今回のテディ本部長の麻薬容疑での逮捕の一報は警察からではなく国会議員からだったとの報道もでている。
それによると国会法務委員会のアハマド・サロニ副委員長が事実関係を確認したと発表した、というのである。そして「(逮捕の情報は)正しく麻薬犯罪関与である」としたうえで「国家警察の正式な確認を待とうではないか」と地元メディアに話したという。
その後リストヨ国警本部長は「TGの麻薬関連犯罪への関与を確認した」と、テディ本部長の実名ではなく、イニシャルでの発表となった。
国会議員が最初に公表し、後手となったリストヨ国警本部長の発表もイニシャルでの言及と、任命4日後の逮捕それも麻薬関連犯罪容疑という事実に相当の衝撃を受けていることを伺わせる事態となっている。
ジョコ・ウィドド大統領もここまでの警察の腐敗にショックを受けていることは間違いない。政府調査委の「132人が死亡した主要因は警察の催涙弾」とする調査結果に対して警察は即座に「今後は催涙弾を使用しない」と対応してみせたが、果たしてサッカーなどの大型イベントの警備をしっかりできるかどうか。
サッカーファンのみならず多くの国民も、警察への失望と同時にジョコ・ウィドド大統領がどこまで腐敗した警察組織に改革のナタを振うことができるか、大いに注目している。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など