ミャンマー拘束の久保田氏、入管法違反で禁固3年追加 焦点の解放時期は?
禁固3年の実刑判決が追加で下された久保田氏の写真 Issei Kato-REUTERS
<訴追された容疑はすべて結審し、残るは軍政の政治的判断>
ミャンマーの軍事政権の強い影響力の下にある裁判所は10月12日、中心都市ヤンゴンにあるインセン刑務所内の特別法廷で日本人映像ジャーナリストの久保田徹氏(26歳)に対する入国管理法違反容疑の裁判を行い、禁固3年の実刑判決を下し結審した。
これで久保田氏が訴追を受けていた扇動罪、電子取引法違反、入管法違反の3つの容疑での裁判はすべて判決が下されたことになり、焦点はいつ釈放・強制送還の手続きが行われるかに移った。
ヤンゴンの日本大使館は「引き続き早期釈放に向けて働きかけを続けていく」としている。
久保田氏は7月14日にミャンマーに観光ビザで入国。同月30日にヤンゴン市内南ダゴン郡区で反軍政を掲げる民主派が行った「フラッシュ・モブ」といわれるゲリラ的、短時間、少人数の抵抗デモの様子を撮影・取材中、近くにいた警察官に拘束・逮捕された。
この際通訳、コーディネーターとみられるミャンマー人2人も同時に身柄を拘束されたがこの2人は現在も逮捕されたままで消息も明らかではないという。
久保田氏の逮捕容疑は観光ビザでの取材活動が「資格外活動」に当たるとする入国管理法違反容疑と、刑法505条の「社会秩序を乱そうとする行為」に基づく扇動罪容疑、さらに電子取引法違反にも問われていた。
8月16日には刑務所内の特別法廷で入管法違反容疑の初公判が非公開で開かれ、それ以降毎週のように公判は開かれていたという。
その後10月5日には扇動罪と電子取引法違反容疑の裁判が開かれ、即日結審して扇動罪で禁固3年、電気通信法で禁固7年の判決が言い渡されていた。
この時の裁判は通常の裁判と異なり、弁護士も同席できない非公開の軍事法廷による突然の公判で関係者には寝耳に水だったといわれている。
刑期をめぐる混乱は軍事法廷に起因か
軍事法廷と一般の裁判の違いが影響しているのか、久保田氏への扇動罪と電子取引法違反の判決については混乱も生じている。
日本の多くのメディアは判決当日には扇動罪の禁固3年と電子取引法違反の禁固7年を加算して禁固10年と伝えていたが、翌日になると「禁固7年」と軌道修正した。
この修正にはヤンゴンの日本大使館からの情報が根拠になっているとの見方が有力で、それは「禁固刑は同時に服役が可能で長期の方が適用される」というもので、それによると久保田氏の5日の判決は禁固7年となる。
米CNNは「扇動罪で禁固3年、電気通信法違反で禁固7年」とだけ伝え加算するかどうかには言及していない。また米ニューヨーク・タイムズ紙は「禁固10年」と報道して加算されるとの立場をとっている。
ミャンマーの独立系メディアでも「禁固10年」と報じた媒体もあるが、一般法廷と異なり軍事法廷には被告側の弁護人が同席できないため、判決内容の確認が難しいという一面も影響している。