退任表明のファウチ その功績と過ち、そして意図的についていた「嘘」
The Last “Trusted Doctor”
「信頼できる医師」というモデルにも大きな欠陥があった。米疾病対策センター(CDC)は公衆衛生の危機に際して「一番であれ、正しくあれ、信頼できる存在であれ」をモットーとしている。だがファウチをはじめとする公衆衛生の専門家は、「高潔な噓」を何度もついていた。人々の行動を社会的に好ましいと思われる方向に誘導するために、全てが真実だとは言えない発言を意図的にしていたのだ。
例えば20年末には、集団免疫をつくるのに必要と予測されるワクチン接種率を「上方修正」した。人々の行動を予測し、そこに「調整」を加えることは、公衆衛生の専門家としてのファウチに染み付いた感覚だった。
ファウチと家族は、殺害の脅迫も受けていた。彼の信頼感の低下から科学界が得られる教訓があるとすれば、「一番であれ、正しくあれ、信頼できる存在であれ」の次に、こう加えることかもしれない。
「そして透明性を確保せよ」
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