タイ憲法裁がプラユット首相の職務停止 任期の解釈めぐり対立、政変や王室批判再燃の可能性も
タイの憲法裁判所はプラユット首相(写真)の任期見直しを求めた野党側の請願を審理することを決定し、首相の職務を停止した。Athit Perawongmetha - REUTERS
<2014年以来首相の座にいる男が停職に。何が起きた?>
タイのプラユット首相が憲法裁判所から首相の職務一時停止命令を受けて首相職を辞し、やはり軍出身の副首相プラウィット氏が首相代行となった。
これは首相の任期は「最大で8年間」とするタイ憲法の規定を巡ってどの時点をプラユット首相の任期の起算点とするかで、政権・与党側と野党や反プラユットを掲げる市民団体との間で意見が分かれていたことが原因である。
野党などは首相任期の任期満了時期の判断を憲法裁に仰ぐ請願書を提出。これを憲法裁が受理したため「首相職の一時停止」を命令することになった。首相の職務停止には憲法裁の裁判官9人中5人が賛成した。
憲法裁は今後1〜2カ月かけて審理を行った後に判断を下したいとしている。
タイは2022年11月に「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」首脳会議を開催予定で、プラユット首相は議長として会議を成功に導き政権基盤をさらに強化することを狙っていた。
今回の憲法裁の命令に関しては、2014年5月の軍事クーデターで政権を追われ現在海外亡命中のインラック前首相とその兄であるタクシン元首相らの野党勢力は「プラユット政権を終わらせる好機」と捉えて今後反政府活動を強化する可能性が出ている。
プラユット首相は国防相職には留まる
8月24日に憲法裁の「首相職の一時停止命令」を受けたプラユット首相は、憲法裁の判断を尊重するとして首相職を一時的に辞したものの、兼務している国防相の職務は続行する方針を明らかにした。
野党側は首相の任期8年の起算点を2014年8月24日、つまり当時のプラユット陸軍司令官がクーデターでインラック政権を倒し暫定首相に就任した日から計算して「任期満了」と主張しているのだ。
これに対し政権側や与党は2019年6月にそれまで暫定首相だったプラユット氏が下院総選挙での与党勝利を経て正式に首相に就任した時を起算点にしており、任期は2027年までと主張している。
またプラユット首相が2014年のクーデターで2007年憲法を廃止して「首相任期8年」を定めた新憲法が施行された2017年4月7日を起算点とする説も与党関係者から出ており、そうなるとプラユット首相の任期は2025年までになり、いずれも任期はまだ満了していないとの主張の根拠となっている。