反プーチン派に残ったのは絶望と恐怖と無力感...ロシア国民の本音とは【現地報告】
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ソ連崩壊後、ロシアでは血なまぐさい戦争や度重なるテロが起き、政治的な抑圧が行われ、著名人の暗殺も相次いだ。ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤや人権活動家のナタリヤ・エステミロワ、元第1副首相で野党指導者のボリス・ネムツォフも暗殺された。
国民は、プーチン支持か反プーチンかで分かれ、家族の間でも口論になる。8年前の春にロシアがクリミア半島を併合し、その後、ウクライナ東部の親ロシア派による分離独立運動を支援し始めると、賛成か反対かで人間関係が崩れた。
ロシアの一般国民が砂糖などの価格高騰に悲鳴を上げるなか、世界中の人は、ほとんどがウクライナ支援の声を上げている。
親友から「売国奴」と怒鳴りつけられ
ロシア国内では、愛国的な空気が広がるにつれ、ウクライナ侵攻のシンボルとなった巨大な「Z」の文字を自分の車に描き込む人が増えてきた。反戦を訴えたり、ウクライナ市民の無差別殺害は恥ずべき行為だなどと発言すれば、あっという間にSNSで攻撃の的になる。
カリーニングラードにいるアンナは、親しい友人と話をするときですら、政治的な話題には触れないようにしてきた。ウクライナ侵攻に抗議する人々の家のドアに、「敵」や「売国奴」と書かれた大きな黄色いステッカーが貼り付けられているのを知っていたからだ。
だが、友情にひびが入ったのは突然だった。姉妹同然と思っていた親友とウクライナのことを話した翌日のことだ。「彼女が電話をかけてきて、私を『売国奴』と怒鳴りつけてきた。3人の子を持つ母で、心理学者としての教育も受けた人が、どうして民間人を殺すことを支持できるのか、私には理解できない」
(筆者は元ニューズウィークのモスクワ支局員)