反プーチン派に残ったのは絶望と恐怖と無力感...ロシア国民の本音とは【現地報告】
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高官のロシア離れも続いている。ロシアの経済改革を主導し、大統領特別代表を務めていたアナトリー・チュバイスが辞任し、ロシアを出国。元副首相で、ロシア最大のイノベーション促進機関スコルコボ財団のアルカジー・ドボルコビッチ代表も、ウクライナ侵攻に異議を唱えた後にロシアを離れた。2人は政権内の「リベラル派」の中心人物だった。
ドボルコビッチは米マザー・ジョーンズ誌に対し「戦争は人間が経験し得る最悪のもの」と述べ、「人の命を奪うだけではなく、希望や夢を壊し、関係やつながりを絶ってしまう」と語っていた。
この発言をめぐり、与党・統一ロシアの主要議員はドボルコビッチを「売国奴」と非難。ロシア社会を「自浄する」ためにも免職処分とすべきだと主張した。
ウクライナで死傷者が増え続け、ロシア兵に大勢の犠牲者が出ているなか、プーチン政権は言論の自由を抑圧する新たな措置を講じた。裁判所はメタ(旧フェイスブック)を「過激派組織」と認定し、国内でフェイスブックとインスタグラムを使えなくした。どちらも反体制派だけでなく、多くの慈善団体や中小企業が利用しているサービスだ。
困窮者に食料を提供している団体「ギブ・フード」では、新型コロナウイルスの感染が拡大した際、インスタグラムを通じて寄付を募り、モスクワで高齢者や病人に食事を提供してきた。同団体の関係者は匿名を条件に、5万1000人のフォロワーがいたインスタグラムのプラットフォームが失われたのは痛手だとして、寄付金が急減したと話した。
頭脳流出を防ごうと躍起になるロシア政府
ロシアには不安と絶望が広がっている。サンクトペテルブルクでは3月19日、学生や教員、研究者ら約500人が大学に対し、自分たちを締め出しているとして抗議の声を上げた。
生物学部修士課程の23歳の女子学生は、「ウクライナ侵攻の抗議集会に何度か参加したが、警察に捕まらないよう注意した」と話した。警察が教職員に尋問の手順を送り付けていたからだ。彼女は今、ヨーロッパの大学の国際交流プログラムを利用して出国しようとしている。そうすればロシアの研究機関にいるより、待遇もずっとよくなると言う。
ロシア政府は自国の科学者を引き止めようと躍起になっているが、頭脳流出に歯止めをかけることはできなかった。プーチンも過去に、最先端の科学者についてこう語っている。「ソ連時代のように国内に閉じ込めて締め上げるか、あるいは給料を上げてやるかだ」