最新記事

アメリカ社会

集団セックス殺人の冤罪晴らしたノックス、子殺しで近く死刑執行の母を支援

2022年4月22日(金)08時48分
キャサリン・ファン
アマンダ・ノックス

12年ぶりに事件のあったイタリアに戻り、刑事司法の会で講演するアマンダ・ノックス Guglielmo Mangiapane-REUTERS

<スキャンダラスなセックス殺人の容疑者として世界中の注目を集め、一度は有罪になったアマンダ・ノックスが、死刑執行を待つ母親の冤罪を晴らそうと自身の経験も交えた長いブログを投稿した>

2007年にイタリアでイギリス人留学生が集団セックスを強要された上に殺害された事件で、容疑者として殺人罪で起訴されたルームメイトのアメリカ人、アマンダ・ノックスが、1週間後に予定されているメリッサ・ルシオ死刑囚の刑執行停止を求める運動に参加した。ルシオを「冤罪被害者のファミリーに迎え入れたい」という。

ノックスは、一度は殺人罪で有罪となったものの、2015年にイタリアの最高裁で行われた再審で無罪が確定した。彼女は4月19日の長文のブログで、自分とルシオは2人とも不当な有罪評決の犠牲者だと述べた。

■アマンダ・ノックス、冤罪を語る


ルシオは2007年に当時2歳の娘を殺害した罪で有罪となり、死刑判決を受けた。4月27日に刑の執行が予定されている。テレビタレントのキム・カーダシアンやテキサス州議会の過半数の超党派議員など、数多くの著名人や議員が刑の執行中止を求めており、今回ノックスもそのリストに加わった。

■キム・カーダシアンも支援するルシオ


私も自白を強要された

ルシオの娘マリアは、軽度の障害があったために歩くときバランスが取りづらく、2007年2月15日に階段から転落。2日後に死亡した。

その日の夜、当局はルシオを取り調べて、彼女の弁護団によれば「自白を強制」した。冤罪の撲滅を目指す非営利団体「無実プロジェクト」によれば、ルシオは取り調べ中100回以上にわたって無実を主張した後、娘の怪我の一部について責任を認める虚偽の供述をしてしまったという。

検察は、ルシオがマリアを虐待し、怪我をさせたと主張した。そして2008年、ルシオは死刑判決を受けた。しかし公判後、12人の陪審員のうち5人が評決について疑問を表明。当時、自分たちに知らされなかった証拠を基に再審を行うよう求めた。

ノックスは19日の投稿の中で、自分もイタリアで、罪を認める虚偽の供述を行ったと述べ、無実であっても弱い立場に置かれると、人は罪を認めてしまう傾向があると主張した。

「私は当時まだ20歳で、故郷から遠く離れた外国に一人きりで、外国語で取り調べを受けた」と彼女は書いた。「ルームメイトが不合理に、残虐な方法で殺されたばかりで、犯人は逃走中で、警察以外に誰も頼る人がいなかった。そして5日間で53時間以上の取り調べを受けた後、私は罪を認めた。メリッサ・ルシオもそういう弱い立場にあった」

ノックスはまた、ルシオが罪を認めるに至ったほかの要因として、娘の死後すぐに取り調べを受けたことや、ルシオが性的虐待やドメスティック・バイオレンスの犠牲者だったことなどを挙げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中