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寒い日は鍋だ!という人のほとんどが知らない「鍋の素」の残念な正体とは

2022年2月10日(木)17時48分
安部 司(『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事) *東洋経済オンラインからの転載

もち米を焼酎の中で糖化して作る「本みりん」とは、味も風味も異なります。でも本みりんに比べたら、コストはだいたい10分の1程度と、ぐんと安上がりでできるのです。

今回取り上げた2つの例でおわかりいただけたかと思いますが、まずは「コストありき」なのです。

私が食品開発の現役時代は、たとえば「200ccを200円で売る」などと先に決めて、それに合わせて作っていました。コストを念頭に置きながら、上記の要領で材料を「より安いもの」に「置き換えて」いくのです。

コスト優先で「より安いもの」にしたことで味が物足りなくなったり、風味がなくなったりしても構いません、それを補うのが「添加物やエキス類」の力なのです。

もちろん、すべての「鍋の素」がこのようなコスト最優先で作られているとはいいません。それにコストだって大事です。コスト度外視で作ったら、値段が高くなって売れませんから。

しかし「食品開発のプロ」「添加物のプロ」を自認する私が、売り場に並んでいる「鍋の素」の原材料を見れば、「どんなコスト意識で作られたものか」がすぐわかります。

みなさんはコスト最優先の「置き換え」で作られた「鍋の素」を、それでも平気で買うでしょうか?

「鍋の素」がなくても「絶品鍋」は簡単に作れる!

もちろん私は「鍋の素」を買ってはいけないと言っているのではありません。忙しいとか、味のバリエーションを増やしたいとか、それなりの理由があるときは使ってもいいと思います。

ただ、私が言いたいのは「鍋をするときは『鍋の素』を使うのが当たり前」というのは思い込みにすぎないということです。

「鍋の素」を買わなくても、家にある調味料で十分、おいしい鍋ができます。

『安部ごはん』では、私が開発した「魔法の調味料」のひとつ「かえし(しょうゆと砂糖を合わせて寝かせたもの)」と「和だし」、それに酒で具材をサッと煮るだけで作れる「野菜たっぷり節約鍋」を紹介しています。「かえし」と「和だし」だけ用意しておけば、10分で簡単に作れます。

具材はお好みの野菜や豆腐を中心に何でもいいのですが、野菜だけでなく鶏肉を入れると、鶏肉から出るだしで、さらに旨味がアップして、おすすめです。

books20220210a.pngキムチ鍋の場合は、「和だし」に、豚肉と鶏肉を両方使ってください。これで中華風・韓国風のだしになります。それと、もちろん本物のキムチを入れてください。キムチ鍋本来の「乳酸発酵のおいしさ」が楽しめるからです。

どうも「鍋の素」を使う人の多くは、お鍋を「素材の旨味」ではなく「つゆ」で食べる傾向にあるように思います。でも本来、鍋料理は「つゆ」だけではなく、「素材の旨味」を楽しみ、食べるもの。

「絶品鍋」は自宅で簡単にできるので、みなさんもぜひ「体も心も温まるおいしい鍋料理」で、この寒さを乗り切ってくださいね。

安部 司(あべ・つかさ)

『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事
1951年、福岡県の農家に生まれる。山口大学文理学部化学科を卒業後、総合商社食品課に勤務する。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組んでいる。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第一種公害防止管理者を務めつつ、食品製造関係工業所有権(特許)4件を取得。開発した商品は300品目以上。 2005年に上梓した『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)は、食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、70万部を突破するベストセラーに。その他の著書に『食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済新報社)などがある。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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