最新記事

米社会

インターンなしには企業も政府も存続不能、「ブラックすぎる」アメリカの実情

WASHINGTON RUNS ON INTERNS

2022年1月14日(金)17時33分
ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌記者)、アナ・ウェバー(フォーリン・ポリシー誌インターン)

220118P40_INT_03.jpg

ワシントンの議員会館のインターン TOM WILLIAMSーCQ ROLL CALL/GETTY IMAGES

国務省は多様性の改善に取り組んでいるが、めぼしい効果は上がっていない。低所得層の学生を門前払いするインターンシップは、失策の最たるものだ。

国務省のインターンは、多くが裕福な家庭の出身だ。「うちのインターンで親に生活の面倒を見てもらっていない学生は1人も知らない」と、ある中堅職員は語る。

広報担当によれば、国務省は年に1200人のインターンを国内外のポストに採用している。あらゆるバックグラウンドの学生に外交官の道を開く「トーマス・R・ピカリング・フェロー・プログラム」など、有給の研究プログラムを実施していることもアピールする。

だがインターンの無賃労働については、議会に責任を押し付ける。「学生に給料を払うためには議会に承認された法定権限と予算が必要になる。支援を取り付けるべく、国務省は議会と密接に協力している」と、広報担当は説明する。

インターンには予算がないと言いつつ

民主党のホアキン・カストロ下院議員と共和党のリー・ゼルディン下院議員は昨年、国務省のインターンシップを有給とするための歳出を盛り込んだ超党派法案を提出。これは21年度国務省権限法案に統合されたが、上院での駆け引きで削除されてしまった。国務省は今、22年度のインターンも無給で募集している。

こうした慣行に幻滅して、外交分野や議会で働くことを断念する学生もいる。あるシンクタンクでインターンをした学生は、ワシントンに来てから生活費の高さに気付き、わずかな手当を増額してほしいと上司に頼んだ。だが、「このプログラムは予算が限られているため無理」と、すげなく断られてしまったという。

その晩、彼はワシントンの高級レストランで開かれたイベントの手伝いに駆り出された。元大使や政府高官など、そうそうたる顔触れによる討論会だった。後になって、その費用が数千ドル(つまりインターンの手当の数倍)と聞いて、彼は愕然とした。予算が限られていると言っていたのに......。彼は今、本当に外交分野でキャリアを積むべきか考え直している。

こうしたインターンシップの現状を、デービッド・フレッチャーほどよく知る人物はいない。フレッチャーは、ワシントンにあるアメリカン大学国際関係大学院のキャリアアドバイザーとして、16年ほど前から計1万人以上の大学院生の就職やインターンシップを支援してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中東欧・中東などの成長予想引き下げ、欧州開銀「2つ

ビジネス

英バーバリー、通年で34%減益 第4四半期の中国売

ビジネス

ABNアムロ、第1四半期は予想上回る29%増益 高

ビジネス

三菱UFJFG、発行済み株式の0.68%・1000
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中