インターンなしには企業も政府も存続不能、「ブラックすぎる」アメリカの実情
WASHINGTON RUNS ON INTERNS
そして、議会のインターンシップが、優秀な学生ではなく、能力は劣るが強力なコネを持つ学生に回されたり、学生たちがインターンをしつつ生活費を稼ぐことに疲れ果ててしまったり、経済的に無理だからと、外交政策分野でのインターンシップに応募することさえ諦めてしまうのを見てきた。
「無給から有給へのシフトが少しずつ進んでいるのは間違いない」と、フレッチャーは語る。それでも、アメリカン大学の学生向け求人案内に掲示されるインターンシップの半分は、無給とされている。
なかなか変化が起こらない理由の1つは、経済的に余裕があるから「無給で働いてもいい」という学生がコンスタントに供給されるからだ。それに名門シンクタンクやNGO、そして国務省などの行政機関は、「うちで働けるなんて名誉だろう? 履歴書に国務省で働いたと書けるだけでも、立派な報酬だ」と考えがちだと、フレッチャーは指摘する。
インターンは法的な地位も曖昧だ。1938年公正労働基準法は、営利企業が従業員に仕事の対価を支払うことを義務付けている。だが、その人物がインターンだと雇用主が立証できれば、支払い義務はない。また、会社がその人物の働きから得る利益よりも、その人物がインターンとして得る経験やスキルのほうが価値が高いと主張すれば、無給を正当化することもできる。第一、行政機関は営利企業ではないから、公正労働基準法の定義が当てはまらない。
こうした法的地位の曖昧性は、ワシントンの一部行政機関や連邦議会が、インターンシップを強力なコネを持つ学生で埋めることも可能にしている。議員事務所が大口献金者の子弟をインターンに採用するのは珍しくないと、3人の議会関係者は取材に対して語った。
誰も実態を把握していない
連邦政府が、議会や省庁におけるインターンシップの実態をどのくらい把握しているかも分からない。少なくともワシントン周辺では、インターンの数を記録している政府機関は皆無のようだ。労働省統計局とワシントン雇用サービス局は、こうした記録を取っていないと認めた。
大学を中退したベラには、インターン時代の忘れられない思い出がある。「何より鮮明に覚えているのは、議事堂の廊下で、ふと周囲を見回したとき、私のような顔立ちの人は1人もいなかったことだ。用務員以外はね」。ベラはコロンビアで生まれ、アメリカで育った。
「現実に目覚めた瞬間だった。議会は、私たちが医療や教育のためにいくら蓄えておくべきかといったことを決める場所なのに、アメリカ社会の構図を全く反映していなかった」