最新記事

米社会

インターンなしには企業も政府も存続不能、「ブラックすぎる」アメリカの実情

WASHINGTON RUNS ON INTERNS

2022年1月14日(金)17時33分
ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌記者)、アナ・ウェバー(フォーリン・ポリシー誌インターン)

ホワイトハウスのインターンは、毎日きちんとしたスーツを着ていくルールになっている。ベラはひとそろいのスーツしか持っていなかったため、それを毎日着ていると、「『ほかに着る物ないの?』とある職員に言われた」と、彼は振り返る。

転機となったのは、ベラがメンターになっていた後輩の言葉だった。「彼は連邦議会でインターンをしていたが、無給だったため、クリーニング代を捻出するために、食料雑貨を買うのを控えていると言っていた」と、ベラは語る。「そのとき、こんなサイクルは断ち切らなくてはいけない。もっといいやり方があるはずだと思った」

ベラは、就職していたPR会社を辞めて、インターンの支援団体を立ち上げた。その名も「ペイ・アワー・インターンズ(われわれのインターンに給料を払え、POI)」。最終的な目標は、行政機関や企業などの、あらゆるインターンを有給にすることだ。

粘り強い活動でついに変化が

「最後にもらった給料を元手にPOIを立ち上げた」と、ベラは語る。設立当初は、どうなっていくのか全く分からなかった。出資してくれる組織もなかった。ベラは、時には朝5時から夕方4~5時までPOIの仕事をした後、レストランの接客係として働いて生計を立てた。

だが、議会に焦点を絞った粘り強い活動が、ついに変化をもたらしつつある。ベラが率いる小さなチームは、上下両院の議員全545人に働き掛けて、議会のインターンに給料を支払うための立法を訴えた。その結果、18年予算法案にインターンに支払う給料が盛り込まれたのだ。多くの議会スタッフと支援団体は、この改革が実現したのはPOIのおかげだとたたえる。

現在、POIにはフルタイムのスタッフが5人と、アルバイトが2人、そして有給インターンが2人いて、連邦行政機関だけでなく、州議会のインターンにも給料を払うよう圧力をかける活動もしている。最初のターゲットはカリフォルニア州だ。

ベラは大学に復学して、20年に学士号を取得した。現在、ロサンゼルスに住む彼は、無給インターンがはびこる新たな業界を見つけた。エンターテインメント業界だ。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中