インターンなしには企業も政府も存続不能、「ブラックすぎる」アメリカの実情
WASHINGTON RUNS ON INTERNS
人道支援団体その他のNPOは少人数で回している所が多いから、インターンはウェブサイトの管理から助成金の申請、後援者との連絡まで何でもやらされる。
シンクタンクではイベントを企画しプログラムの運営に関わり、時には上級研究員の報告書を代筆する。執筆の功績を認められず、報告書が上級研究員の名前で出たケースは、今回の調査で3件あった。
インターンシップ制度の存在をいいことに、こうした組織は賃金や福利厚生を提供する責任を感じずに、数十年来無料の労働力を調達してきた。だがその代償は大きい。
マイノリティーは門前払い
無給や低賃金のインターンシップは外交や安全保障の分野を目指す低所得層、とりわけマイノリティーの学生の前に巨大な障壁として立ちはだかる。連邦政府機関の多く、なかでも国務省は多様性と包括性の面で非常に立ち遅れているが、格差はキャリアの出発点から開いているのだ。
状況は変わりつつあるものの、足並みはそろわない。
名門シンクタンクの中には、新米国安全保障センターをはじめ、給料の支払いを始めたところもある。だが常時80~90人のインターンがいると公表しているウッドロー・ウィルソン国際研究センターでは、その大半が無報酬だ。国際救済委員会(IRC)や国際危機グループといったNGOや有力シンクタンクでも、給料は出ていない。
少額の手当を支払うシンクタンクやNGOもある。中東問題研究所は月に500ドルまで手当を出すと宣伝している。これは週40時間勤務のフルタイムならば時給3.13ドル、パートタイムならば6.25ドルになる計算。ちなみにワシントンでは時給15.20ドルが最低賃金だ。
ケンタッキー州にあるセンター大学4年生のハンナ・テリーは、この夏ルワンダのアメリカ大使館でインターンをする機会を得た。
国務省のインターンシップは無給だから、海外の大使館に派遣された場合は、渡航費や現地での生活費もたいてい学生が負担する。幸い今年はコロナ禍でインターンシップもリモートで行われたため、渡航費は節約できた。
だがリモートでも、ただ働きは高くついた。以前インターンをしたNPOは規模が小さくても資金繰りが苦しくても、学生への支払いは工面した。一方、年間600億ドル近い予算が付く国務省は1セントも払わない。
「大学の援助がなければインターンシップはできなかった」と、テリーは振り返る。「NPOは学生に給料を払うことができるのに、政府には払う気がない。本当にがっかりした。政府の機関でインターンがしたくても、給料が出ないなら無理だ」