インターンなしには企業も政府も存続不能、「ブラックすぎる」アメリカの実情
WASHINGTON RUNS ON INTERNS
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<無賃労働を強要し、貧しい学生の就職の可能性を閉ざす。アメリカの不公平な制度はなぜ改善されないのか>
限界が来たのは2016年の春だった。カルロス・マーク・ベラはワシントンで学ぶ多くの大学生と同じように、学業とアルバイトとインターンシップを掛け持ちしていた。全ては卒業後、政府機関で働くためだった。
米連邦議会と欧州議会でインターンを経験し、大学を卒業するときには修士号を同時に取得する見込みで、ホワイトハウスのインターンにも採用された。ベラの経歴は実に見事だが、1つ難点があった。インターンには給料が出ないのだ。
親が裕福ではないので、生活費は自分で稼がなければならない。かといって就職のことを考えれば、無給でもインターンシップをしないわけにはいかない。
さらにベラは米軍予備役の訓練も受けていたから、やらなければならないことは雪だるま式に増えた。学業を含めた拘束時間は週80時間を超えた。「常にあっちへこっちへと走り回り、居眠りしないように必死で我慢していたが、とうとう燃え尽きた」と、彼は言う。限界に達したベラは、大学を辞めた。
こうした学生がアメリカの外交を支えているのは公然の秘密だ。政府機関であれ民間であれ外交の仕事に就くには履歴書に「インターン」の一言が必要だと知る学生は、薄給どころか無給でもせっせと働く。
無給で働ける経済的余裕がなければ
「ただ働きのインターンがいなければ政府が機能しないことは、誰でも知っている」とワシントンに拠点を置くシンクタンク、アトランティック・カウンシルのレイチェル・リゾ上級研究員は言う。「この業界の人間が今の仕事に就けたのは、無給でインターンをする経済的余裕があったからだ」
フォーリン・ポリシー誌は政府機関、シンクタンク、非営利団体など外交政策に関わる組織でインターンをしている、あるいは過去にインターンを経験した約30人に話を聞いた(雇用主を批判すれば就職に響くとの不安から、一部の回答者は匿名を条件とした)。
すると回答者の多くが、インターン先で賃金を得ていなかった。インターンシップはフルタイムの就職口を得るために重要だと、大勢が答える一方で、ほぼ全員が待遇を不公平と感じていた。無給のインターンシップに参加する余裕がないことを理由に、公務員や外交関係の進路を諦めた者もいた。
インターンがいなければ、ワシントンはたちまち立ち行かなくなるだろう。議会では受付や電話番をし、法案に関する調査を行う。国務省や国防省では政策文書の作成を手伝い、SNSに投稿する文章を書き、事務をこなす。