コロナ禍のトラウマから、子供の心を守るレジリエンスの育て方
KIDS ARE ALRIGHT
アメリカでは新型コロナに関連する死者が65万人を超え、社会的な孤立や経済的な不確実性、恐怖などが人々を疲弊させている。
それでも喜ばしいことに、人間のレジリエンスに関する研究はここ数十年で大きく前進している。なかでも励まされる知見は、レジリエンスが固定された資質ではないということだ。私たちは自分にも子供にも、レジリエンスを高められるように教えることができる。
レジリエンスの科学に初めて注目したのは、21歳の大学院生だった。1960年代にペンシルベニア大学の心理学の研究室で、ある実験が行き詰まっていた。研究チームは床の金属板を介して犬の足に電気ショックを与える装置を使い、低い柵を飛び越えればショックを回避できることを学習するまでの時間を測定しようとしていた。
しかし、多くの犬が実験に協力してくれなかった。3分の2の犬が数回ショックを受けただけで諦め、床に寝そべって動かなかったのだ。
大学院生だったマーティン・セリグマンは、この行動を「学習性無力感」という概念で説明した。そして、3分の2の犬が諦める理由だけでなく、残りの3分の1の犬が諦めない理由を追究した。
数十年の研究を経て、セリグマンは学習性無力感が人間にも当てはまることを示した。一方で、よりレジリエンスの高い人(つまり、無力感に陥らない「3分の1の人」)は、楽観的であることも分かった。
ストレスで起きる「無快感症」
レジリエンスと学習性無力感の両方に関連する脳の神経回路の研究も、セリグマンたちの分析を裏付ける。マウント・サイナイ医学大学院の神経科学者エリック・ネスラーは、ストレスにさらされたマウスが、人間が鬱や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の影響を受けたときと似た行動障害を起こすことを発見した。
これは「無快感症」と呼ばれるもので、通常なら喜ぶもの(この場合、砂糖水や高脂肪の食べ物、運動用ホイール、遊び、性行為など)に喜びを感じなくなる。しかし、少数のマウスは、これらの楽しみに対する興味をすぐに取り戻したようだ。
2つのグループの違いは、脳の報酬中枢、行動の制御と意思決定に関連する前頭前皮質、および記憶や感情に関連する扁桃体と海馬にまたがる神経回路にあった。これらの脳の領域は、常に環境を観察して、顕著な特徴を記憶し、適応するために行動を修正することに関連がある。