コロナ禍のトラウマから、子供の心を守るレジリエンスの育て方
KIDS ARE ALRIGHT
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PROSTOCK-STUDIO/ISTOCK
<新型コロナのパンデミックによるトラウマをしなやかに乗り越えるため、大人も子供のレジリエンスを信じて育てよう>
アメリカではこの秋から多くの学校が本格的に再開されるが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の「普通」にすんなり戻れそうにはない。子供たちはじっと座っていられず、授業中におしゃべりをして、廊下を走り回り、口答えをして、ルールを守らせることもいつもより難しく感じるだろう。
「大勢の子供が、生理学的にストレスに過剰反応する状態で教室に戻ってくる」と、元小児科医でカリフォルニア州公衆衛生局長官のナディーン・バーク・ハリスは言う。
1年半のコロナ狂騒曲は子供に累積的な影響を与えていると、バーク・ハリスは指摘する。そのうえ突然、生活のパターンが変わるのだ。自宅に閉じ込められてパソコンで勉強していた子供たちが、教室で社会的なプレッシャーにさらされれば、ストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌されるだろう。
そこに新学期という当たり前の興奮が加わって、普段はおとなしくて行儀の良い子供でも、不安や悲しみ、恐怖、怒りを感じやすくなる。こうした感情は、注意力の低下、引っ込み思案、破壊的な行動、欠席といった形で表れるだろう。
しかしこの時期は、掛け算や読解力以上のことを教える機会にもなる。それは困難な経験から立ち直る方法という、人生のあらゆる局面で重要なスキルだ。
レジリエンス向上のための手助けを
今後数カ月で子供が新型コロナの試練から立ち上がり、レジリエンス(回復力)を高めることができるかどうかは、親はもちろん、教師などサポートする人々の行動がカギを握る。子供だけでなく私たち全員が、レジリエンスを試されている。
教育現場における適切な対応は、テンションが高過ぎる子供を職員室に行かせたり、教室の端に座らせたりすることではないと、バーク・ハリスは言う。子供が自分の小さな体がどうして興奮しているのかを理解して、落ち着きを取り戻して新しい日常に適応できるように、教育者が手助けしなければならない。
昨年12月にカリフォルニア州公衆衛生局が発表した438ページの報告書「レジリエンスへのロードマップ」は、新型コロナに限らず子供にトラウマや苦痛の兆候が見られるときに、大人がどのように対応すればいいかという指針を示している。
2回目のパンデミックの夏を終え、ワクチン接種率は少しずつ上昇し、人々は普通に戻ろうと恐る恐る最初の一歩を踏み出している。だが、社会全体の精神的な健康状態がパンデミック前に完全に戻るのはいつになるのか、このトラウマや不安から解放される日が来るのかという疑問は残されたままだ。