韓国世論も日韓関係の悪化しか生まない「徴用工裁判」に嫌気
手動での消火活動、最悪のシナリオでは退避も想定 NASA/Roscosmos/REUTERS
<韓国世論は、出口が見えず、日韓関係の悪化しか生まない「徴用工裁判」に嫌気が差しており、裁判所の判断に少なからぬ影響を与えている可能性も...... >
9月8日、ソウル中央地裁は、旧朝鮮半島出身労働者の遺族が日本製鉄を相手取って起こした訴訟で、原告の訴えを棄却した。
韓国では元労働者が日本企業を訴える「徴用工裁判」が相次ぐが、大邱と水原の地裁が、大法院判決に基づく日本企業の資産の差し押さえと現金化に苦心するなか、ソウル地裁が元労働者の訴えを退けている。
ソウル中央地裁は消滅時効を理由に原告の訴えを棄却
2021年9月8日、元労働者の遺族4人が、元労働者が戦時中、岩手県釜石製鉄所に強制動員されたとして日本製鉄に対し損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は消滅時効を事由に原告の訴えを棄却した。同地裁は8月11日にも元労働者の遺族が三菱マテリアルを相手取った訴訟で、消滅時効を事由に原告の訴えを棄却している。
韓国の民法で損害賠償請求の消滅時効は、違法行為が行われた日から10年、または、被害者が損害と加害者の違法行為を認知した日から3年と定められている。8月に棄却が下された訴訟の提起は17年2月、9月の訴訟は19年4月だった。
元労働者を巡る裁判は1997年が最初である。2人の元労働者が日本政府と新日本製鐵(現・日本製鉄)に慰謝料と未払い賃金を求める訴訟を大阪地方裁判所で起こした。2003年、最高裁が「1965年の日韓請求権協定で解決済み」として上告を棄却し、日本の判例となっている。
韓国政府は2005年、日韓請求権協定には慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人原爆被害者は含まれないと述べ、2009年、労働者の未払い賃金は請求権協定で解決済みという見解を示した。地裁と高裁は政府見解に沿う判決を下したが、2012年5月23日、大法院(最高裁)が、高裁の棄却判決を差し戻した。
その後、2018年10月30日、大法院は新日鉄住金(現・日本製鉄)に対し、原告4人に1人あたり1億ウォンの損害賠償の支払いを命じる判決を下した。以降、韓国の法曹界は、消滅時効の基点は12年5月か18年10月かで見解が分かれるが、ソウル中央地裁は12年5月と判示した。
ソウル中央地裁は6月7日にも元労働者と遺族85人が日本企業16社を相手取った訴訟で却下決定を下しており、3回続けて元労働者らの訴えを退けたことになる。
地裁が外交問題の矢面に立たされている
元労働者の勝訴が確定した裁判で、地裁は大きな壁にぶつかっている。日本政府は、日韓請求権協定で解決済みという立場から韓国の裁判所が送達した文書の受け取りを拒絶しており、日本企業が賠償金支払いに応じることはない。
また、韓国の裁判所が日本や第三国にある資産を差し押さえようとすれば、当該国当局の協力が必須だが、日本はもとより、日韓の確執に巻き込まれたくない各国も協力しない。裁判所は韓国内にある資産の差し押さえと現金化を進めるが、日本政府が強硬に反発する一方、韓国政府は沈黙しており、地裁が外交問題の矢面に立たされている。