最新記事

米政治

アメリカ政治・社会の価値観の理解に欠かせない、レーガンのレガシー

REAGAN’S MORNING IN AMERICA

2021年8月28日(土)12時13分
H・W・ブランズ(テキサス大学オースティン校教授〔歴史学〕)

210831P44_RGN_04v2.jpg

87年にはベルリンの壁の前で「この壁を壊しなさい」とソ連指導部を挑発した  THIERLEINーULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES

トランプは多くの共和党員が重視してきた礼節をかなぐり捨て、大統領の品格を踏みにじった。それでもなお共和党員はトランプ批判には及び腰だ。なぜか。共和党の右傾化と民主党の左傾化がもたらした党派的な結束が党内批判を妨げている側面もあるが、レーガンの影響も否めない。レーガンはモーゼの十戒に続く11番目の戒めのようなルールを共和党に設けた。いわく「なんじ、同志たる共和党員をこき下ろすことなかれ」。

トランプ自身は平気でこのルールを破っているが、他の共和党員は今も忠実にこれを守っている。

1つだけ、トランプがレーガン流をそっくりそのまま取り入れた手法がある。レーガンは「偉大なコミュニケーター」だった。当時の支配的なメディアであるテレビをフル活用し、記者やエディターのフィルターを通さずに直接、有権者に語り掛けた。トランプはこのアイデアをソーシャルメディア時代に応用した。彼のツイッターの膨大な数のフォロワーはファクトチェックなしの妄言の数々を日々追い掛けた。

アメリカの未来を信じ続けた

しかし、おそらく最も重要なのはレーガン政治の核心を成す価値観が今の共和党、さらには大多数のアメリカ人のそれとは必ずしも一致しないことだろう。レーガンはアメリカ史に刻まれる困難な時代を何度も経験した。大恐慌、第2次大戦、冷戦、混乱の60年代、そしてベトナム戦争敗北後の自信を失った70年代。それでも彼はアメリカの輝かしい未来を信じて疑わなかった。レーガンはアメリカ的なもの全てを愛する「永遠のオプティミスト」だったのだ。

退任後にアルツハイマー病と診断されたときでさえ、その信念は揺るがなかった。「私は今、人生のたそがれへと向かう旅に出発したところだ」と、彼はアメリカの人々に宛てた別れの手紙で述べた。「私は確信している。アメリカにはいつも輝かしい夜明けが訪れる、と」

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中