東京五輪はアスリート生命を脅かすスーパースプレッダーになる?
A Superspreader Olympics Could 'Ruin' Athletes' Careers
本誌が東京五輪組織委員会にコメントを求めたところ、広報担当者は19日に行われた東京2020 新型コロナ対策に関する独立専門家パネルの委員長をつとめるブライアン・マクロスキー博士の記者会見での発言に言及した。博士は、オリンピックが集団感染の場になることを懸念しているかという問いに、こう答えた。
「現状は、想定の範囲内だ。PCR検査の結果がすべて陰性になると思っていたら、そもそも検査をしようとは思わなかっただろう」
マクロスキーは選手や大会関係者が出発前、到着時の空港、オリンピック村で繰り返し検査を受ける「フィルタリング」のプロセスを説明した。
「幾重ものフィルタリングの各層が、第三者に与えるリスクを軽減する。私たちが期待しているのはそこだ。そして現在の感染者数は実のところ、かなり低い。予想よりも格段に低いのだ」と、彼は言う。
オリンピックのプレイブックによると、オリンピックとパラリンピックの選手村に滞在する関係者の80%以上が大会に先立ってワクチン接種を受けることになっているが、ワクチン接種をしなくても、競技に参加することはできる。
ワクチン接種率の高さは、感染リスクが低いことを意味するが、それでもオリンピックがスーパースプレッダーイベントになって選手が感染するリスクはゼロにならない、とオーストラリアのビクトリア大学ミッチェル教育健康政策研究所所長のマクシミリアン・デ・コーテン教授は言う。
軽症でも選手には打撃
「ひとつの場所に集まる人が多ければ多いほど、コロナウイルスが一度に多くの人に感染するチャンスが増える」と、デ・コーテンは指摘する。
「ワクチン接種を受けた人でさえ、ウイルス、特にデルタ変異株には感染する可能性がある。ワクチン接種をしていればたいていの場合、症状は比較的軽く、感染力はそれほど強くない」
「しかし、オリンピックレベルで競技する選手の場合、軽い感染であっても、トップレベルの力を出すチャンスは奪われるかもしれない」
一方、オーストラリアのバーネット研究所の疫学者マイク・ツール教授は新型コロナ感染者の約30%が「ロング・コビッド(長引く後遺症)」を発症する、という推計をもとに、新型コロナに感染することは「アスリートとしてのキャリアを台無しにしかねない衰弱症状」を引き起こす可能性があると本誌に語った。
彼はまた、完治後も後遺症が長引くロング・コビッドの発症率は、感染の重症度とは関係がないことを指摘した。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、新型コロナ感染後の持続的な後遺症には、息切れ、疲労感、ブレインフォグ(脳の霧)とよばれる頭にいつもモヤがかかって、思考力が低下する状態などがある。