成果は乏しくとも「大成功」だった米ロ会談
What Biden and Putin Really Did
対するプーチンは記者会見で「非常に建設的で偏りがなく、経験豊富」とバイデンを評価した。だが旧ソ連の情報機関KGBの元将校らしく、ソ連流のレトリックを駆使することも忘れなかった。
ロシアで起きている反体制派の投獄・殺害について問われた際、プーチンはグアンタナモ、および世界各地の刑務所での拷問を引き合いに出した。収監中のロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイを、今年1月に米連邦議会議事堂を襲撃した暴徒に例える場面もあった。
サイバー攻撃に関する質問に対しては、アメリカには大規模なサイバー攻撃プログラムがある(そのとおりだ)が、ロシアには存在しない(これは嘘だ)と回答した。
エネルギーパイプラインや上水道など、16の「重要インフラ」分野へのサイバー攻撃を違法化するための協議開催を提起したと、バイデンは記者会見で発言している。数年前から検討されている案だが、サイバー攻撃について基本的事実も認めないプーチンの態度を考えれば、協議が実現しても成果はないだろう。
優先事項でないロシア
実際のところ、バイデンはロシアに多くの時間を割きたくないと考えている。より関心が高いのは、敵対国としての中国の台頭を阻止すること。そして独裁的国家の脅威や挑戦を前に、民主主義国の力と協調を見せつけるためにも、アジアと欧州の同盟国との団結を図ることだ。
それでも、弱体化が進むとはいえ大国(で、近年は好戦姿勢を強める)ロシアは無視できない存在だ。ウクライナの主権や領土を侵害し、欧米諸国の分裂を図り、重要インフラをサイバー攻撃する同国には、何らかの対処をする必要があった。
バイデンは欧州歴訪中、少なくともこうした問題をアピールすることができた。6月14日に行われたトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領との会談は長時間に及び、前向きなものだったという。これはトルコのNATO離れを狙ってきたプーチンに対抗する上で、とりわけ効果的だったのではないか。
ジュネーブでの会談によって、バイデンは要点を直接的に再表明し、土台作りを行うことができた。だが、何のための土台だろう? おそらくは将来的な協力体制のため。あるいは、将来的な危機に備えた接触ルートの確立だけが目標なのかもしれない。
筆者は米ロ首脳会談前日の記事で、両大統領が何らかの協議の開始を宣言するだけで十分な進展だと指摘した。そういう意味で、確かに「進展」は十分にあった。
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