中国の「反外国制裁法」と問われる日本の覚悟
習近平国家主席 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS
6月10日、中国で「反外国制裁法」が制定された。外国から制裁を受けた際の報復制裁を規定したもので、制裁に協力した者も対象とする。日韓などの対米追随を牽制することになり、日本の及び腰が加速しそうだ。
反外国制裁法の成立過程
全人代(全国人民代表大会)常務委員会は、6月10日「中華人民共和国反外国制裁法」を制定し、その日の内に習近平国家主席が署名し実施されることとなった。
全人代常務委員会は6月7日から10日まで開催されたが、反外国制裁法の制定に関しては、2020年11月に習近平が中共中央総書記として「中共中央全面依法治国工作会議」を開催した際にその方向性をすでに指摘していた。
その方向性に沿い、今年3月に開催された全人代や全国政治協商会議などで、「反制裁、反干渉」を中心とした法律を今年中に制定すべきだという意見が提案されていた。新疆、チベット、香港、台湾・・・など、すべての中国の内政干渉を口実にして中国に対して制裁を加えたり、特殊な中国公民(たとえば新疆ウイグル自治区にいる公民など)に対して不公平で「いわれなき」不平等な行動(=ウイグル綿花の不買といった行動)を取ることなどに対して、中国は断固とした報復措置を取ることができるような法的根拠を制定しなければならないといった意見だ。
それを受けて全人代常務委員会が立案審議を重ねてきたものである。同法は16条で構成されている。
6月11日から開催されているG7首脳会談に合わせているようにも見えるが、バイデンが大統領に当選して以来、中国が練ってきた戦略で、バイデン大統領が国際社会に戻ってきて同盟国らと連携を強めることを警戒して手を打ったものと見る方がいいだろう。
どのような罰則が科せられるのか?
公表された「反外国制裁法」の原文によれば、ざっくりとまとめた場合、主に以下のような措置が成されると考えられる。
●中国が外国から不当な制裁や内政干渉を受けた時は、中国への制裁を決定・実行した関係者(個人や組織)やその親族を中国政府がリスト化して「報復リスト」を作成し、罰則を与えることができる。
●罰則の内容は主として「入国拒否や国外追放」、「中国国内の財産凍結」あるいは「すべての中国企業との取引禁止」(筆者注:すべての中国企業に対して、当該個人または組織との取引を禁じる)などが含まれている。これらの対抗措置は国務院の関連部門によって決定される。