中国の「反外国制裁法」と問われる日本の覚悟
●いかなる組織や個人も、外国が(筆者注:たとえばアメリカが)中国の公民や組織に対して行った差別的な制裁の実施を支援してはならない(筆者注:例えば日本などの特定の企業がウイグルの綿を買わないなどの行動によりアメリカの対中制裁を支援すること)。
● 関係する組織や個人が規定に違反し、中国人民や組織の合法的な権利や利益を侵害した場合、中国人民や組織は人民裁判所に訴訟を起こし、侵害の停止と損害の賠償を要求することができる。
●中国国内の組織と個人は反外国制裁法措置に従う義務がある。それに従わない場合は、法的責任を追及される。
反外国制裁法制定に関する中国の主張
今般の法制定に関して全人代常務委員会法制工作委員会(法工委)の担当者は記者の問いに答えている。また専門家による「反外国制裁法」の解読や、環球時報における解説などもあり、これらの情報から、反外国制裁法制定に関する中国の主張をうかがい知ることができる。その主なものを列挙する。
●中国は一方的な制裁をすることに一貫して反対してきており、平和的な話し合いを通して互利互恵精神で外交を展開すべきだと主張してきた。しかし、中国が強国になっていくことが気に入らない一部の国(=アメリカ)が、さまざまな口実を探し出しては中国の内政に干渉し、一方的に不当な制裁を中国に加えてきた。
●1990年代以降、国連大会は「一つの国が域外への法律を乱用して他国の企業などを排除する一方的行動に出てはならない」という趣旨のことを決めてきた。中国の反外国制裁法制定はこの国連決議の精神と軌を一にするものだ。国連憲章に基づいた合法的権益を守るためのものであり、正当である。
●中国は国連憲章を守る。国連憲章に沿って行動している。しかし、いくつかの国は小さなグループを形成して、不当に中国に不利をもたらす行動を一方的に取っている。それは国連憲章に違反し、国際秩序を乱すものであり、中国は断固反対する。国連憲章を守り、国連決議に従って行動するのが、あるべき姿だ。
アメリカに追随する国に対する牽制
中国が反外国制裁法を制定しなければならなくなったのは、アメリカの大統領がトランプからバイデンに替わったからで、トランプは「アメリカ・ファースト」を唱えた一国主義で、G7も必要ないと軽んじていたし、国連さえ不要だとみなしていたような人物だった。だから中国はアメリカ一国を相手にしていれば済んだのだが、バイデンは「アメリカは国際社会に戻ってきた」と唱えて、日米豪印4カ国から成るQUAD(クワッド)や先進7ヵ国G7を重んじたり、G7にさらにオブザーバーとしてインドや韓国を誘い込んだりしている。