最新記事

中国

中国の「反外国制裁法」と問われる日本の覚悟

2021年6月12日(土)19時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●いかなる組織や個人も、外国が(筆者注:たとえばアメリカが)中国の公民や組織に対して行った差別的な制裁の実施を支援してはならない(筆者注:例えば日本などの特定の企業がウイグルの綿を買わないなどの行動によりアメリカの対中制裁を支援すること)。

● 関係する組織や個人が規定に違反し、中国人民や組織の合法的な権利や利益を侵害した場合、中国人民や組織は人民裁判所に訴訟を起こし、侵害の停止と損害の賠償を要求することができる。

●中国国内の組織と個人は反外国制裁法措置に従う義務がある。それに従わない場合は、法的責任を追及される。

反外国制裁法制定に関する中国の主張

今般の法制定に関して全人代常務委員会法制工作委員会(法工委)の担当者は記者の問いに答えている。また専門家による「反外国制裁法」の解読や、環球時報における解説などもあり、これらの情報から、反外国制裁法制定に関する中国の主張をうかがい知ることができる。その主なものを列挙する。

●中国は一方的な制裁をすることに一貫して反対してきており、平和的な話し合いを通して互利互恵精神で外交を展開すべきだと主張してきた。しかし、中国が強国になっていくことが気に入らない一部の国(=アメリカ)が、さまざまな口実を探し出しては中国の内政に干渉し、一方的に不当な制裁を中国に加えてきた。

●1990年代以降、国連大会は「一つの国が域外への法律を乱用して他国の企業などを排除する一方的行動に出てはならない」という趣旨のことを決めてきた。中国の反外国制裁法制定はこの国連決議の精神と軌を一にするものだ。国連憲章に基づいた合法的権益を守るためのものであり、正当である。

●中国は国連憲章を守る。国連憲章に沿って行動している。しかし、いくつかの国は小さなグループを形成して、不当に中国に不利をもたらす行動を一方的に取っている。それは国連憲章に違反し、国際秩序を乱すものであり、中国は断固反対する。国連憲章を守り、国連決議に従って行動するのが、あるべき姿だ。

アメリカに追随する国に対する牽制

中国が反外国制裁法を制定しなければならなくなったのは、アメリカの大統領がトランプからバイデンに替わったからで、トランプは「アメリカ・ファースト」を唱えた一国主義で、G7も必要ないと軽んじていたし、国連さえ不要だとみなしていたような人物だった。だから中国はアメリカ一国を相手にしていれば済んだのだが、バイデンは「アメリカは国際社会に戻ってきた」と唱えて、日米豪印4カ国から成るQUAD(クワッド)や先進7ヵ国G7を重んじたり、G7にさらにオブザーバーとしてインドや韓国を誘い込んだりしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中