爆発寸前のパプア紛争、「悪魔の部隊」による報復作戦が始まる
Another Papuan Incursion
2018年12月、独立派による銃撃事件が起きたパプアに急行する兵士たち IWAN ADISAPUTRAーANTARA FOTOーREUTERS
<国の情報機関トップの暗殺を契機に、独立派を「テロ組織」指定。軍の出動による弾圧強化が始まった>
インドネシア政府は紛争が続く東部のパプア州で軍のプレゼンスを強化している。4月末に1カ月間の特殊訓練を終えた精鋭部隊「第315歩兵大隊」の兵員400人がパプアに向かったと、地元メディアが5月2日に伝えた。第315歩兵大隊は「悪魔の部隊」の名で知られ、東ティモールやアチェ州の紛争でも分離独立派と戦ってきた。
今回の派遣のきっかけになったのは、軍高官の暗殺だ。4月25日に情報機関の現地支部を率いるグスティ・プトゥ・ダニー・ヌグラハ准将が武装勢力の待ち伏せ攻撃で殺害された。
グスティは分離独立派の攻撃が相次いだパプア州中部のプンチャック県を視察中に襲撃された。事件後、分離独立組織「自由パプア運動」の軍事部門「西パプア民族解放軍」が犯行声明を出した。
治安当局は分離独立派に激しい報復攻撃を加えるだろう。ジョコ・ウィドド大統領率いるインドネシアの現政権は即座に報復を誓い、関与した全ての反政府分子を「追跡し逮捕する」よう警察と軍に命じた。「パプアには武装組織が存在できる場所はないと、改めて強調したい」と、ジョコは述べた。
独立派武装組織をすべて「テロ組織」指定
パプア州の州都ジャヤプラでは4月30日からインターネットが使えなくなっている。2019年8~9月にパプアで抗議デモが広がり死者が出たときも政府はネット接続を切断した。今はネットに加え、携帯電話も使えなくなっているとの情報もある。
インドネシア東端のニューギニア島に位置し、パプアニューギニアと国境を接するパプア州は1960年代にインドネシアに編入されて以来、分離独立の動きが絶えない。
ここ何年かは特に緊張が高まり、過去3年間にパプアに送り込まれた国軍の兵士は2万1000人超。今回の派遣もそれに続くものだ。
緊張の高まりを示す兆候はまだある。インドネシアの安全保障・政治・法務調整相モハメド・マフッドはグスティ暗殺を受け、パプアの独立派武装組織を全て「テロ組織」に指定した。今や国内メディアの多くがパプア独立派を「犯罪組織」と呼んでいる。