メキシコ、血塗られた選挙戦 昨秋から関係者85人が命落とす
ロペスオブラドール政権は21日、選挙絡みの暴力事件に関する告発や捜査を現在400件以上確認しており、148人の候補者が警護対象になっていると発表した。だが複数の調査によれば、それでもメキシコではほとんどの暗殺事件が未解決のままに終わっているという。
エテレクトは、混乱の大部分はベラクルス、オアハカ、プエブラ、ゲレーロ、メヒコ、ミチョアカンなど、互いに隣接する諸州に集中しているとしている。
エテレクトによると、ロペスオブラドール大統領が2018年7月の大統領選に勝利したときは、現在のようにパンデミックが選挙情勢に影を落とすこともなかったが、10カ月間の選挙期間中に政治絡みの殺人事件が152件発生し、そのうち26件が終盤2週間に集中していた。
メキシコの年間殺人件数はその年に史上最多を記録し、2018年12月に就任したロペスオブラドール大統領は、暴力事件の抑制を約束した。しかしその後の2年間で、殺人件数はむしろ増えている。
特に大きな影響を受けているのがソノラ州だ。ムリエータ候補は、米国系のメキシコ人モルモン教徒であるアドリアン・レバロン氏の弁護士を務めていた。レバロン氏は2019年、ソノラ州で発生した麻薬カルテルの殺し屋によるものとされる悪名高い大量殺人事件で娘と4人の孫を失っている。
この2カ月間、治安問題はメキシコにとって最大の課題の1つとされている。今月発表されたエル・フィナンシエロ紙の調査によれば、メキシコ国民の3分の2は、治安改善に向けた政府の対応に批判的だ。
ロペスオブラドール大統領の人気は依然として高いが、支持率は低下している。エル・フィナンシエロ紙の世論調査では、3月から4月にかけて大統領の支持率は4%ポイント低下して57%となった。
世論調査会社コンスルタ・ミトフスキーが毎日行っている調査からは、5月3日の鉄道死傷事故以来、大統領の支持率はさらに下落している様子がうかがわれる。
政治的な暴力と政権に対する影響について大統領府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「恐れはしない」
ムリエータ氏はシウダード・オブレゴン市を含むカヘメ郡での不正一掃を公約に掲げていた。ギャングの脅迫には屈しないと明言し、選挙に向けたスポットCMでも有権者に向けて「恐れはしない」と語っていた。
ムリエータ氏殺害の容疑者はまだ逮捕されていない。暗殺の脅威は一部の候補者にとっては許容できる限度を超えてしまい、エテレクトによると、全国で少なくとも18人の候補者が2021年の選挙戦から撤退しているという。