脱炭素「優等生」とされるイギリスの環境政策が、実は全く持続可能でない理由
NO CLIMATE LEADERSHIP
「ジョンソンは相変わらず、レトリックと現実がかみ合っていない」と、英政策フォーラム「コモンウェルス」の理事で気候変動時代の世界経済を考察した共著もあるマシュー・ローレンスは言う。保守党が気候変動に本腰ならば「イギリス史上最大規模の道路計画ではなく、ご自慢の『グリーン産業革命』にもっと金をかけるはずだ」と、彼は言う。
こうした主張を裏付けるように、現政権は英北部のカンブリアでの新しい炭鉱開発を最近までやめようとしなかった。慌てて計画を中止したのは、CCCのジョン・ガマー会長が1月29日付の政府宛ての公開書簡で炭素ガス排出が増大すると批判してからだ。
COP26が近づいてくるなかで、ジョンソンは環境政策のリーダーとしてのイギリスの評判と、実際にはちぐはぐな政府の姿勢とのギャップが国際社会に気付かれないよう願っているはずだ。
英気候変動シンクタンク「E3G」のニック・メイビーCEOは、COP26がイギリス外交にとって「ブレグジット後で初の本格的な試金石」になり、そのため保守党政権にとって「極めて重要」なイベントとなると指摘する。
COP26が開かれる11月までの間、ジョンソンがソフトパワー戦略を仕掛ける相手は、気候変動を優先課題に掲げる米バイデン政権になると、メイビーは予測する。トランプ前米政権での混乱と問題山積のブレグジットによって米英の結び付きは揺らいでいるが、「イギリスは明らかに気候変動を両国関係の再構築に使おうとしている」と、メイビーは言う。
ブレグジットをめぐる地政学を脇に置いて言うならば、アメリカや国際社会に対するイギリスの「グリーン優等生」アピールが成功するには、今後10年の炭素排出削減に関する信頼できる計画が必要なことは明らかなように思える。
今のところ、そのような計画はない。これはイギリスにとって、深刻な事態を生みかねない。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら